カナダ政府、外国投資への監視強化法案を上程、国家安全保障への懸念

(カナダ)

トロント発

2022年12月13日

カナダのフランソワ・フィリップ・シャンパーニュ・イノベーション・科学・産業相は12月7日、カナダへの外国投資に関する規定を定めたカナダ投資法(注)を改正する「カナダ投資法改正法」(別称「投資に関する国家安全保障審査現代化法」)の法案C-34を下院議会に上程したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

新法案では、所定の事業分野への投資実施に先立ち、新たな申請義務を設けるほか、産業相に対して投資に関する国家安全保障の審査を延長する権限や、審査中に条件を課す権限、さらに、審査企業に国家安全保障上のリスクを軽減するための誓約を求める権限を付与する。また、友好国との情報共有を行えるよう、産業相へ外国に情報を開示する権限を付与するとともに、コンプライアンス違反に対する罰則を強化する。加えて、審査の過程で機密情報の利用を認める一方、その後の非公開化に関する新たな規定を導入する。

会見でシャンパーニュ大臣は「わが国政府は外国からの直接投資を歓迎し続けるが、警戒を怠らず、カナダの利益を守る必要がある。今回の新たな改正は、ビジネスのスピードに合わせた作業を確保しつつ、同法を今日の現実に即したものにするのに役立つものだ」と法案導入の意義を説明した。法案では「新たな申請義務」を必要とする事業分野は特定されていないが、同大臣は重要鉱物や半導体、量子コンピュータや人工知能、個人情報を扱う企業などをその一部として挙げた。

連邦政府によると、新法案は2009年に国家安全保障審査プロセスが導入されて以来、カナダ投資法の改正で最も重要なものとなる。改正により、カナダ投資法の国家安全保障審査プロセスについての透明性が高まるとともに、政府が迅速に行動を起こすことが必要な場合にはそれが可能になるという。

政府は10月末にインド太平洋経済枠組み(IPEF)への参加意向を表明後(2022年10月31日記事参照)、G20サミット(2022年11月18日記事参照)やAPEC経済首脳会議(2022年11月21日記事参照)でインド太平洋地域との関係強化を発表するなど、昨今、中国と距離を置き、友好国とのサプライチェーン構築に重きを置く姿勢を鮮明にしている。同法案発表で中国に対する直接的な言及はないものの、11月末に発表した「インド太平洋戦略」(2022年11月29日記事参照)では、中国を「破壊的な力を増している」と指摘していた。シャンパーニュ大臣は会見で「地政学は変化しており、われわれも変化する必要がある。今日、われわれがしていることはシグナルを送ることだ」と述べている。

なお、当地報道によると、少数与党の自由党政権は、新民主党との政策協定により、同法案を可決するのに十分な票数を確保する見込みとなっている(「グローブ・アンド・メール」2022年12月8日)。

(注)カナダへの外国投資について、純益と国家安全保障の両面から審査することを規定しており、投資家に確実性を提供する一方で、特定の状況下でカナダが個々の投資を阻止する能力を留保するために制定された。同法は投資や経済成長、雇用を促進し、投資がカナダにとって純益をもたらさないか、または国家安全保障に害を及ぼす場合にのみ介入するよう設計されている。

(飯田洋子)

(カナダ)

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