オルポ新政権が発足、4党で連立

(フィンランド)

ロンドン発

2023年06月29日

フィンランド議会は6月20日、4月に行われた国会議員選挙(2023年4月4日記事参照)を受け、中道右派・国民連合党のペッテリ・オルポ党首を新首相に選出した。新政権の閣僚は、国民連合党から8人、フィン人党から7人、スウェーデン人民党から3人、キリスト教民主党から1人の4党連立政権となった(添付資料表参照)。

オルポ首相は就任演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、福祉社会サービスの確保にとって強固かつ安定的な財政が重要とした上で、不確実性が高まる国際情勢の中で、以下について取り組むと述べた。

  • NATO加盟国としての地位の確立と積極的なEU政策推進
  • 企業の雇用創出、成長に向けた機会向上、それに向けた初等教育分野への投資
  • クリーンエネルギーへの投資
  • 治安維持、国境の安全確保

新たな政府プログラム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、NATO加盟国として同盟国との相互援助に備え、NATOの作戦、国際演習、委員会や作業部会などにも参加するとした。また、GDPの少なくとも2%を国防費に充てることにコミットすると表明した。

社会保障政策については、よりシンプルな福祉制度へ改革を進めるとした。その一環として、生活費や住宅費に関わる給付金などをまとめた新制度の創設を掲げた。また、受給者に対しては、就職活動の実施や教育訓練の受講などを義務付けるとした。

労働市場では、柔軟性を向上するとしたほか、労働争議を防止し任意調停を促す方法を検討するとした。

教育に関しては、基礎能力(読み書き、計算能力)が低下していることを踏まえ、子供たちの学習環境・機会の改善などを通じ、より公平に教育を実施できるようにするとした。他の北欧諸国と比較して幼児教育の参加率が低いため、特に移民の子供たちの参加率を高める対策を講じるとした。

R&D投資については、2030年までに研究開発支出を対GDP比4%にするという目標を掲げ、政府からの資金割合を1.2%に増額すると発表。研究開発費の増額は大学や研究機関などでの基礎・応用研究に配分されるとともに、フィンランドアカデミー、ビジネスフィンランドによる補助金にも配分される。

クリーンエネルギー政策では、再生可能エネルギー生産・貯蔵などの分野への良好な投資環境を整備する。特に水素精製プロジェクトの適地として主要な役割を果たすとしている。

フィンランド経済研究所(ETLA)は新政権のプログラムについて、雇用関連の措置を評価する一方で、投資パッケージの曖昧さ、法人税制の課題解決に向けた取り組みの欠如などを指摘している。

(松丸晴香、半井麻美)

(フィンランド)

ビジネス短信 6dab50c26199be02