IMF・世界銀行総会のマラケシュ開催確定、被災地支援の骨格も固まる

(モロッコ)

ラバト発

2023年09月27日

IMFと世界銀行は9月18日、予定どおりに年次総会を10月9~15日にモロッコのマラケシュで開催すると発表した。同国中部で9月8日に発生したアル・ハウズ大震災(2023年9月12日記事参照)の1カ月後のため、被害を受けたマラケシュでの開催可否が検討されていたが、IMFと世界銀行は共同声明を出し、モロッコ当局や専門家と慎重に検討して開催を決めたとした。また、震災に遭遇した中での年次総会開催は、国際社会がモロッコと被災者への支援と連帯の姿勢を示す機会となると説明した。

ジェトロが18日に国際会議出席のためマラケシュを訪問した際に、現地の状況を確認したところ、国際会議などで使われる新市街地に被害は見られなかったが、旧市街(メディナ)の商業エリアでは、一部土塀が倒壊し、通行止めのところがあった。しかし、多くの店舗やレストランは営業を再開しており、欧米を中心とする観光客が買い物をする姿が見られた。

現時点の主な被災地救援、復興に向けた政府の取り組みは次のとおり。

  • 9月10日、中央銀行(国立アル・マグリブ銀行)に「モロッコ震災復興特別基金126号」の開設を決定。現時点の総献金額は約100億ディルハム(約1,450億円、1ディルハム=約14.5円)。
  • 9月14日、モハメッド6世国王主催の震災対策会議で次の支援を公表。(1)支援対象は約5万戸、(2)被災した家庭1世帯につき3万ディルハムを支給、(3)住宅再建のための資金援助提供(全壊14万ディルハム、部分倒壊8万ディルハム)など。
  • 9月20日、同震災対策会議で総予算1,200億ディルハムの復興5カ年計画を策定。対象は被災した6つの州と県(マラケシュ、アル・ハウズ、タルーダント、チチャウア、アジラル、ワルザザート)の420万人で、(1)被災者の住宅再建とインフラ整備、(2)地震の影響を受けた山岳地帯の生活環境改善、(3)経済活動と雇用の促進などに取り組む。

政府は、今回の震災による死者数は2,946人、負傷者5,674人と発表している(9月13日時点)。ファオジ・ルクジェ経済・財政相付き予算担当特命相は9月22日に国会で、163の自治体、2,930の集落が被害を受け、被災者は280万人、損壊した建物は5万9,674棟、うち32%が全壊したなどと現状を報告した。モロッコの冬は雨季に当たり、標高の高いところでは積雪となる。長年住み慣れた土地を離れたがらない被災地域の住民も多いが、寒さ対策も含め、被災者目線の支援が求められている。

写真 マラケシュ旧市街(メディナ)の入り口(9月19日、ジェトロ撮影)

マラケシュ旧市街(メディナ)の入り口(9月19日、ジェトロ撮影)

写真 マラケシュ旧市街にあるジャマ・エル・フナ広場(9月19日、ジェトロ撮影)

マラケシュ旧市街にあるジャマ・エル・フナ広場(9月19日、ジェトロ撮影)

(本田雅英)

(モロッコ)

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