中国、EUの中国製EV調査に不満表明、公平・無差別・予見可能な市場環境を要望

(中国、EU)

北京発

2023年09月19日

中国商務部は9月14日、EUが中国製の電気自動車(EV)について、中国政府の補助金を問題視し、相殺関税の付加を視野に調査を始めると発表したことについて(2023年9月14日記事参照)、同部のウェブサイトで記者の質問に答えるかたちで外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「強い懸念と強烈な不満」を表明した。

商務部は、EUによる調査は「公平な競争」の名目で自身の産業を保護しようとするもので、明らかな保護主義的行為だと批判した。中国製EVの競争力はイノベーションと産業チェーン・サプライチェーン構築の結果とした。また、中国製EVは全世界のユーザーに歓迎されており、グローバルな気候変動対応とグリーントランスフォーメーションにも大きな貢献をしていると評価した。

その上で、中国はEUに対し、グローバルな産業チェーン・サプライチェーンの安定と「中国・EU包括的戦略パートナーシップ」という大局的観点から、中国と対話・協議を行い、中国・EUのEV産業の共同発展のために公平・無差別・予見可能な市場環境を作り、保護貿易主義に反対するとともに、グローバルな気候変動対応に力を入れ、カーボンニュートラルの実現に努力することを勧めるとした。また、中国はEUの保護主義的傾向と今後の行動を注視し、中国企業の合法的権益を断固として守るとした。

中国からEU27カ国へのEV輸出は近年急激に増加している(添付資料図参照)。2023年1~7月の中国からEU27カ国へのEV(HS870380)輸出台数(注)は、前年同期比約2.2倍の29万8,546台、輸出単価は2万8,478ドルとなっている。EU27カ国を国別にみると、ベルギーが11万9,750台で約4割を占め、最大の輸出先となっている。スペインが6万670台、ドイツが2万7,973台と続く。

9月14日付の「澎湃新聞」は、中国大手EVメーカーBYDの「唐」が中国では約20万元(約400万円、1元=約20円)、EUでは約56万元相当で販売されている一方、フォルクスワーゲンの「ID.3」は中国では約12万元、ドイツでは約31万元相当で販売されているとし、安価な中国製EVが欧州メーカーのシェアを奪っているという見方を否定した。

9月15日付の「環球時報」は、中国製EVが急速に伸びているのは、コストパフォーマンスの良さが原因とし、貿易障壁ではイノベーションの差を縮めることはできないとした。

(注)貿易統計データベースのグローバル・トレード・アトラス(GTA)のデータによる。

(河野円洋)

(中国、EU)

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