イスラエルとハマスの衝突に対するアフリカ諸国の反応、各国で違い

(アフリカ、ケニア、南アフリカ共和国、イスラエル、パレスチナ)

ナイロビ発

2023年10月17日

アフリカ連合(AU)は10月7日、イスラム原理主義組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に対して声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、即時停戦と両者の話し合いによる問題解決を訴えた。AUはこれまでの長年の衝突の主な原因を「独立した主権国家としてのパレスチナ人の基本的権利の否定」としつつ、今回の衝突に関して国際社会に双方の権利保障を訴えた。

一方で、アフリカ各国の反応は分かれた。北アフリカでは、アルジェリアやチュニジアがパレスチナを支持(2023年10月16日記事参照)したほか、スーダン、ジブチ、リビア、モーリタニアが同様の立場を表明した。サブサハラアフリカでは、南アフリカ共和国とナミビアがパレスチナ支持を表明した。南ア外務省は10月7日、イスラエルがパレスチナの不法占拠を続けていると非難する声明を発表し、13日にはガザの食料や水、電力の遮断は国際人道法に反しているとして、イスラエルを非難した。

イスラエル支持を表明したのは、ザンビアやケニア、ガーナ、コンゴ民主共和国などだ。コンゴ民主共和国のフェリックス・チセケディ大統領は10月8日、ハマスの攻撃を非難し、イスラエルとの連帯を表明した。ケニアも8日、ウィリアム・ルト大統領は攻撃をテロ行為としてハマスを強く非難する声明を発表したが、ケニア外務省は同日、より中立的な声明を発表した。ケニアの現地報道では、ルト大統領のスタンスがAUと異なるとの批判もあり、国内外の多様な受け止めにより配慮したかたちだ。イスラエルは近年、対アフリカ外交の強化に努めており、在外公館をテルアビブからエルサレムへ移転する決定をした国もある。

さらに、2020年12月にイスラエルとの国交を正常化したモロッコなど、複雑な事情を抱える国々もあり、中立的な立場を示す国や、コメントを控える国も多い。また、エジプトは関係各国と会談を重ねるなど和平の仲介に向けた動きを見せている(2023年10月10日記事10月16日記事参照)。ロシアのウクライナ侵攻への国連非難決議でも、アフリカ各国の立場は分かれ(2023年2月27日記事参照)、アフリカは外交上の主戦場となりつつある。

ケニア国内では10月13日、在ケニア米国大使館がイスラム過激派のテロ組織アルシャバーブがハマスと連帯してテロを起こす可能性があるとして注意喚起を発出した。在ケニア日本大使館も同日付で注意喚起を発出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、在留邦人に対して欧米人や旅行者らが多く集まるショッピングモールなどがテロの標的となりやすいと注意を促した。また、ケニアでは、ガソリンの一般販売価格が211シリング(約211円、1シリング=約1円)と過去最高値に達し、中東情勢悪化で油価が上昇すれば、非産油諸国の経済に大きな影響を与えると予想される。

(佐藤丈治)

(アフリカ、ケニア、南アフリカ共和国、イスラエル、パレスチナ)

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