銅大国のペルーとチリ、2024年は市場に供給過多の懸念

(ペルー、チリ)

調査部米州課

2023年10月19日

2023年に入ってから、ペルーの銅生産が好調だ。エネルギー鉱山省が10月15日に公表した報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、2023年1~8月の銅生産量累計は、前年同期比で18.1%増のプラス成長となった。その内訳(添付資料表1参照)をみると、サザン(Southern)やラス・バンバス(Las Bambas)などの大規模鉱山での生産増に加え、2022年9月に商業生産ライセンスを受給したケジャベコ(Quellaveco)の存在が目を引く(2022年9月29日記事参照)。同鉱山の2023年1~8月の銅生産量累計は約20万トンで、既に国内生産シェアの1割強を占めており、ペルー全体の生産量増に大きく貢献している。

一方で、ペルーと同じく南米の「銅大国」であるチリでは対照的な状況となった。チリ銅委員会(COCHILCO)によれば、2023年1~8月の銅生産量累計は、前年同期比で2.4%減とマイナスだった。内訳(添付資料表2参照)をみると、エスコンディダ(Escondida)やラドミロトミック(Radomiro Tomic)、ロスペランブレス(Los Pelambres)などの鉱山では前年同期より増加したものの、その他の鉱山における減少分を埋め合わせるには至らなかった。COCHILCOが2023年第2四半期までの銅市場を分析した報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によれば、国内の銅生産量が前年比で減少傾向にある要因として、(1)鉱石の銅含有量の低下、(2)各種プロジェクト実行の遅れ、(3)鉱山のオペレーション上の諸問題の3つが挙げられている。

2024年へ向けて銅市場は供給過多の予測

国際銅研究会(ICSG)の10月4日付プレスリリースによれば、2023年の精錬銅市場においては2万7,000トンの需要過多となるものの、2024年にはそのバランスが逆転し、46万7,000トンの供給過多となることが予測されている。銅は、2021年に中国を中心とする国々における需要増によって国際価格が一時高騰したものの、直近では1ポンド当たり3.5~3.9ドルのレンジで推移している。ペルー、チリの両国においては、例年の貿易統計においても銅が主要な輸出品として位置付けられることから、供給過多に伴う価格低下が国全体のGDPに与える影響が懸念される。

(佐藤竣平)

(ペルー、チリ)

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