NYで日本産農林水産物の輸出拡大に向けた意見交換会を開催

(米国、日本)

ニューヨーク発

2023年11月07日

ジェトロは11月2日、米国ニューヨーク市で食品関係事業者と日本産農林水産物の輸出拡大に向けた意見交換会を開催した。意見交換会には、在ニューヨークの日本食レストラン協会、日系商社、日系小売店、米国系輸入者などの食品関係事業者、およびジェトロの石黒憲彦理事長が出席し、日本産農林水産物・食品全般の輸出促進ならびに、2023年8月の東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出に伴う一部の国・地域による日本産水産物などの輸入停止(2023年8月24日記事2023年8月25日記事)を受けた、米国での日本産水産物の販路拡大について議論が交わされた。

冒頭、石黒理事長は食関係事業者に対し、世界有数の輸出先である米国での水産物をはじめとした食品全般の販路拡大に向けた、一層の協力を呼びかけた。

意見交換会では、輸出促進に向けて現地関係者から次のような意見が上がった。

  • 日本産食品の品質に対するイメージは良い。円安も輸出の追い風となっている。米国市場に合わせたパッケージングの工夫などマーケティングをしっかり行えば輸出増加のチャンスは広がる。
  • 米国のハイエンドな小売店へ食品を流通させるためには、グローバル・フード・セーフティ・イニシアチブ(GFSI)など食品安全に関する国際的認証の取得が求められる。水産物については、持続可能で適切に管理されている漁業であるか、という消費者の関心の高まりを受けて、「漁業認証」だけでなく、流通・加工過程で認証水産物と非認証水産物が混じることを防ぐCoC(Chain of Custody)認証を求められるケースが増えている。米国のスーパーへの売り込みなどにも、各種認証の取得はより一層重要となる。
  • 輸出可能な商品を作るために、最終製品の製造業者は原材料供給企業に対し、規制や認証取得に対応した原材料の使用を依頼することになる。ただ、二次原材料、三次原材料の供給企業にも米国の規制に対応してもらうには多大な時間と労力が必要であり、これらの原材料供給企業に対し、輸出への意識の変化を促していくことも重要。
  • 日本産の生きた二枚貝や青果物の需要が見込まれており、これらの輸入規制が解除されれば、レストランで提供できる日本産食材の幅は広がるだろう。高価格帯の和牛については、年間を通じて低関税を維持できれば販売しやすくなるだろう(注)。

このほか出席者からは、これまで米国東海岸では、中国系住人の多い一部地域でALPS処理水海洋放出の安全性に関する問い合わせはあったものの、総じてビジネスへの大きな影響はみられない、との発言があった。

ジェトロは、日本産水産物の代替販路開拓の早急な対応が必要なことや、米国が日本産農林水産物・食品の輸出先として第3位の巨大市場であることなどを踏まえ、現地食品関係事業者および在外公館を含む関係者と連携してプロモーションなどの事業を展開していく。

(注)米国での牛肉の輸入に対しは、通常26.4%の関税が課せられるが、割当枠内であれば1キロ当たり4.4セントの低い従量税が適用される。現在の日本に対する割当枠は、日米貿易協定発効に伴い、ブラジル、アイルランド、オランダ、チリ、フランス、ナミビア、英国、ポーランドと共同で計6万5,005トン(このうち日本の低関税枠200トンを含む)となっており、この範囲内においては低関税が適用される。

(北出輝雄)

(米国、日本)

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