政争で72時間の全国規模の交通封鎖、企業活動に影響も

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年11月01日

バングラデシュでは2024年初に実施が見込まれる総選挙を控え(2023年8月1日記事参照)、与野党の抗争が一気に激化している。

10月28日には、首都ダッカ南部のカクライルやノヤポルトンなどにおいて、野党のバングラデシュ民族主義党(Bangladesh National Party:BNP)と警察官の衝突などが発生し、バスが炎上するなどして死傷者が出る事態となり、政府はBNPの幹事長をはじめ関係者を逮捕した。同事件を受けて、野党側は10月29日、約10年ぶりとなる「ホルタル」と呼ばれる大規模なゼネラルストライキを実施した。本動向に際し、在バングラデシュ日本大使館も注意喚起のメール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発出している。さらに、BNPやジャマティ・イスラム(JI)などの野党連合は、10月31日から11月2日までの72時間に及ぶ3日間の交通封鎖を展開すると発表し、すでに実施されている。

「ホルタル」は、バングラデシュにおける伝統的な政治手法の一種で、政府などへの抗議活動を意味し、時にバスに火をつけるなど暴徒化することもある。10年前、2013年の第10次総選挙時には、BNPをはじめとする野党連合はホルタルや交通封鎖を展開したことで、経済・社会活動が制約されたため、大きな批判を浴びた(注)。それ以降、ホルタルや道路封鎖は実施されていなかったが、次回の総選挙を控え、再び交通封鎖が実施されている。在バングラデシュ日本大使館は、注意喚起外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの通知も行っている。

現地日系企業の対応としては、在宅勤務を行い不要不急の外出を控えるなどを基本とする。工場運営を行う日系企業は通常操業を行う企業が大部分とみられるが、ワーカーやスタッフの出勤時間を早めるといった対策を実施する企業もある。

選挙が近づくにつれ、今後もホルタルや交通封鎖が続く可能性がある。そのため、ホルタルや交通封鎖が実施される場合は、不要不急の場合を除き外出を控えたり、どうしても外出が必要になった場合にも、首都ダッカ南部のモティジール、シャハバーグ、ポルトンなどの影響を受けやすいエリアに近付かないなどの対策も必要だ。バングラデシュの出張者については、最新の報道を確認の上、宿泊地域をバリダラ、グルシャンなど大使館が多く立地する地域などに選定することが重要だ。さらに、外務省の「たびレジ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに登録し、現地情報の入手に努めたい。

(注)詳細は、2014年に刊行された『アジア動向年報』に掲載されている、次の記事を参照。「2013年のバングラデシュ 妥協なきまま第10次国民議会選挙強行へ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。また、2018年に実施された総選挙については、2019年1月18日付地域・分析レポートに詳しい。

(安藤裕二)

(バングラデシュ)

ビジネス短信 4c0874b0ee75081c