下院が労働時間短縮に向けた憲法改正案作業部会を設置

(メキシコ)

メキシコ発

2023年12月21日

メキシコ下院は12月18日、労働時間短縮に向けた憲法改正案作業部会を立ち上げた。同作業部会は政労使代表と下院が設置に合意したもので、週休2日の義務化を通じた労働時間短縮に向けた憲法改正案(2023年10月10日記事参照)を全会一致で合意することを目的としている(12月15日付官報公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。作業部会は下院議員と労働組合、企業家組織、連邦政府(内務省と労働社会保障省)の代表で組織し、開かれた対話を通じて憲法改正の修正案を分析し、全ての参加者が合意するかたちで修正案を固めることとしている。週に1度は会合を開き、具体的な案について議論するとともに、内容を市民にも適宜報告する。作業部会は2024年3月に憲法改正修正案を下院の政策調整委員会に提出することで役割を終え、同委員会が最終的な改正案を全会一致で策定、下院本会議は改正について、2024年4月末までの会期で採決を行うとしている。

下院の政策調整委員長を務める野党・国民行動党(PAN)のホルヘ・ロメロ・エレーラ下院議員は12月18日、作業部会設立後の記者会見で、より多くの対話を通じて全ての関係者が合意に達する中間点を見つけることが重要と強調した。PANとしては、労働時間短縮が段階的に実施に移され、雇用主、特に中小企業が改正に徐々に適応していく機会を提供することを求めるとしている(下院プレスリリース12月18日付)。与党・国家再生運動(Morena)のイグナシオ・ミエル下院院内総務も、労使代表を含め広く合意を形成することが重要とし、全ての意見に耳を貸すMorenaの方針を強調した。改正の段階的な適用や特定業種への配慮を求める意見、改正が及ぼす影響についての警告など全ての意見を取り上げ、2024年3月末に最終案を固めて憲法改正を実現すると意気込みを語った(下院プレスリリース同日付)。

経済界はインフォーマル就労増加を懸念

作業部会設立式典に参加したメキシコ全国商業サービス観光会議所(CONCANACO SERVYTUR)のエクトル・テハダ会長は12月19日、改正案を厳格に分析することを求め、雇用主と労働者に対してインセンティブを付与し、正規雇用に対して害ではなく恩恵を及ぼす内容にすることが重要と強調している(同会議所12月19日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。労働時間の短縮が企業の労働コストを上昇させ、その回避のために、法の適用がないインフォーマル雇用が増えることを懸念したかたちだ。

10月16日~11月13日に下院で開催された5回の公聴会では、当初、改正案が経済活動に与える悪影響を懸念する声が経済界などから多く出された。週の労働時間の48時間から40時間への短縮によって260万人の追加雇用が必要となるが、この数の労働者の短期的な採用は不可能で、残業代の支給を増やすだけとの指摘が多かった。企業の操業コスト上昇が商品・サービス価格の値上げを通じてインフレを高進させるとの指摘もあった。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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