欧州産業連盟、次期EU議長国ベルギーへ政策提言

(EU、ベルギー)

ブリュッセル発

2023年12月01日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)と会員団体は11月24日、2024年上半期のEU理事会(閣僚理事会)の議長国ベルギーへの政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2024年は、5年に一度の欧州議会選挙が6月に実施され、10月には現欧州委員会の任期が終了するため、EUにとって政治的に節目の年となる。提言書ではベルギーに対し、産業競争力を重視した経済活性化戦略の策定を促した。

具体的には、「競争力強化や中小企業の発展に不可欠」とするネットゼロ産業法案(2023年3月20日記事参照)や中小企業支援政策パッケージ(2023年9月27日記事参照)などの重要法案の早期採択を挙げた。また、(1)企業の規制順守に伴う負担軽減と単一市場の強化、(2)バランスの取れた経済安全保障政策、(3)気候変動対策と両立する成長戦略の実現、に取り組むよう要請した。

提言書によると、(1)に関して、欧州企業の成長が伸び悩む背景には次の2点が影響している。1点目に、成長が期待される重要産業部門でも、過剰な規制や複雑な事業承認プロセス、リスク回避的な政策によりイノベーションや起業、投資が減退している。2点目に、EU域内には人・物・サービス・資本・データの移動障壁が残り、加盟国によってEUの諸法令の執行状況も異なることから、企業の規模拡大が容易ではない。このため提言書は、企業の成長に影響を及ぼすため対処する必要がある規制の特定に向けて産業界と引き続き協力することや、企業の規制順守に伴う累積的な影響を考慮し、次期欧州委が政策を立案する際には産業競争力への影響評価を確実に実施するよう要請した。

(2)では、戦略的自律と市場開放を両立させる必要があるとして、域外国・地域との関係発展を訴えた。重要原材料分野などで米国との協力を深化することや、欧州企業の域外での事業発展につながる貿易協定の締結を進め、同志国に限らず、全ての通商相手と適切な形で関係構築していくべきとした。中国についてはリスクを考慮しつつ、EUの利益を擁護しながら、互恵的なバランスの取れた関係を築く必要があるとした。

(3)については、産業の空洞化や投資減退を回避しながら脱炭素化を進めて欧州グリーン・ディールを真の「成長戦略」とするには、産業面でもさらなる施策が必要だとした。具体的には、電力市場改革などエネルギー分野での施策、脱炭素技術の開発支援、加盟国の財政健全化、労働者のスキル習得や人手不足解消に向けた施策、政策立案者・雇用者・被雇用者による社会対話の推進を挙げた。

(滝澤祥子)

(EU、ベルギー)

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