中央銀行、公定為替レートの透明性にてこ入れ

(ナイジェリア)

ラゴス発

2024年02月16日

ナイジェリア中央銀行は1月29日に全ての公認ディーラーに「金融市場の価格透明性PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の通達を発出したのに続き、同月31日には「銀行の外貨価値変動リスクに関する報告要件の調和PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」と題した外国為替についての「プルデンシャル(健全性)要件」を通達した。

こうした通達の影響もあり、通貨ナイラの公定レートは1月29日に1ドル889.9ナイラだったが、2月1日には1,414ナイラまで下落し、並行市場といわれる市中両替商(BDC)レートの1,350ナイラとの差が縮まった(添付資料図参照)。中央銀行は公定レートを変動制に移行(2023年6月20日記事参照)して以来、2023年7月以降はBDCレートの差は縮まっていた。これは、ボラ・ティヌブ政権が為替レートの統一を打ち出す政策に沿った動きといえる(2023年5月31日記事参照)。

1月29日の通達では、中央銀行は、金融市場で行われた取引で公認ディーラーが不正確で誤解を招く情報を報告する慣行に注目しているとした上で、そのような慣行は金融市場に意図的に価格のゆがみを生じさせる市場操作に相当し、制裁の対象になると警告を発していた。

また、中央銀行は、外貨(ドル)不足で、ナイラ安が進む中で、外貨をロングポジション(注1)で過剰に保有するインセンティブを生み出す銀行のネットオープンポジション(注2)を通した外貨の価値変動リスクの増大を懸念してきた。そのため、今回規定した健全性要件の1つとして、貸借対照表上や貸借対照表外の総外貨資産のネットオープンポジションの限度額について、減損されていない株主資本の20%のショート(売りポジション)または0%のロング(買いポジション)を超えないように、株主資産に対して設定を行った。そのため、外国為替のロングポジションを持つ銀行は、過剰に保有する通貨を売却することが期待され、短期的には銀行からの外国為替需要の減少が見込まれている。

(注1)ロングポジション:銀行や投資家などが特定の資産を購入し、その価値が上昇することを期待して保有するポジション。ドルはナイラに対して価値が上昇し続けている中、ドルをロングポジションするインセンティブがある。一方で、価値が下落すると損失が生じる可能性がある。なお、外国為替でいうショートポジションは、銀行が外国為替市場で特定の通貨を売り、その価値が下がることを期待して、保有するポジションで、通貨を売り、後で安く買い戻すことを意図している。

(注2)ネットオープンポジション:外国為替取引では、銀行や金融機関が保有する特定通貨の買いポジションと売りポジションの差を示し、プラスの場合は、その通貨を保有していることを示し、マイナスは、その通貨を負債として持っていることを示す。外国為替リスクをどれだけ保有しているかを示す指標にもなる。

(奥貴史)

(ナイジェリア)

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