中国EVメーカーBYD、インドネシアにEV3車種投入、工場設立も正式発表

(インドネシア、中国)

ジャカルタ発

2024年02月01日

中国の電気自動車(EV)最大手の比亜迪(BYD)は118日、インドネシアで展開する多目的スポーツ車(SUV)「ATTO3」、セダン「シール」、小型車「ドルフィン」のEV3車種を発表、同国乗用車市場への参入を発表した。インドネシア経済担当調整大臣府によると、同社はインドネシアに年産15万台のバッテリー式電気自動車(BEV)生産工場の建設計画を発表、投資額は13億ドルで、2024年内に着工する見通しだ。

写真 ジャカルタ市内のショッピングモールで開催されたBYDの展示・試乗会(ジェトロ撮影)

ジャカルタ市内のショッピングモールで開催されたBYDの展示・試乗会(ジェトロ撮影)

写真 BYDが発表したSUV「ATTO3」(ジェトロ撮影)

BYDが発表したSUV「ATTO3」(ジェトロ撮影)

写真 セダン「シール」(ジェトロ撮影)

セダン「シール」(ジェトロ撮影)

写真 小型車「ドルフィン」(ジェトロ撮影)

小型車「ドルフィン」(ジェトロ撮影)

インドネシア国内で新たに生産設備を建設し、EV生産を予定している企業には、EVの完成車や部品の輸入税や奢侈(しゃし)税の減免が受けられる。同社も同税制優遇(2024年1月15日記事参照)の対象となる見込みだ。

2023年のインドネシアのBEV販売台数は前年比39.5%増の1万7,057台で、新車販売台数全体に占める割合は約1.7%にとどまるが(2024年1月29日記事参照)、同社の参入がEV市場の拡大につながるか注目される。

バッテリーの種類について論戦も

EVに搭載するバッテリーの種類についても、関心が高まりつつある。BYDの上記3車種はリン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFPバッテリー)を搭載している。LFPバッテリー製造には、インドネシア政府が高付加価値化を推進してきたニッケルが使用されないため、LFPバッテリーを搭載したEVの市場拡大は政策にそぐわないとする見方もある。2月14日投票の大統領選に向け、1月22日に実施された第4回公開討論会(注)では、副大統領候補のギブラン・ラカブミン氏が「世界最多の埋蔵量を誇るニッケルはインドネシアの強みだ。LFPバッテリーについて議論するのは、中国製品を宣伝することと同義だ」と発言した(「デティック」1月22日)。

LFPバッテリーは、ニッケルなどのレアメタルを使用するタイプのバッテリーと比べ、安価に製造できる特徴がある。中国メーカーのほか、テスラやフォルクスワーゲン、フォードなど欧米メーカーで導入が進む。LFPバッテリーの市場拡大により、インドネシア政府が進めるニッケルの高付加価値化政策に今後影響が及ぶか、動向が注目される。

(注)2月14日投票の大統領選挙に向け、インドネシア選挙管理委員会(KPU)はテーマごとに候補者による公開討論の場を設けている(大統領候補が3回、副大統領候補が2回の計5回)。第4回討論会では、副大統領候補によってエネルギー、天然資源、食料、環境、農業等に関する討論が行われた。

(八木沼洋文)

(インドネシア、中国)

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