米司法省、破壊的技術ストライクフォース設立1周年サミット開催、輸出管理の執行成果を強調

(米国、中国、イラン)

ニューヨーク発

2024年02月15日

米国司法省国家安全保障局(NSD)は2月7~8日にアリゾナ州フェニックスで、破壊的技術ストライクフォースの設立1周年を記念したサミットを開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

このストライクフォースは、ロシアや中国、イランなど米国の敵対国家が米国の先端技術を違法に取得・使用することを防ぐことを目的に、商務省と司法省が中心となって2023年2月に設立した(2023年2月17日記事参照)。全米15都市圏(注1)で輸出管理の執行強化に取り組んでおり、実際に同年5月には輸出管理違反などを理由に5件の刑事訴追を行っている(2023年5月18日記事参照)。こうした事例を含め、司法省のリサ・モナコ副長官は基調講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、この1年間にストライクフォースの取り組みを通じて企業幹部やエンジニアなど十数人を逮捕したほか、防衛・航空・物流分野などの29社に対して、輸出管理規則(EAR)の否認命令(Denial Orders、注2)を発令し、米国の技術へのアクセスを遮断したと実績を述べた。

また、司法省はサミット会期中の2月7日、輸出管理違反などを理由にストライクフォースの取り組みを通じて2件の刑事訴追および逮捕を行ったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ニューヨーク州の事案では、航空宇宙産業で使用する機器を必要な許可を得ずにイラン政府に輸出した容疑で、イラン国籍の2人を刑事訴追した。もう一方のカリフォルニア州の事案では、核ミサイルの発射探知や弾道ミサイル・極超音速ミサイルの追尾に関する米国の技術の流出を企てた容疑で、中国出身で米国籍の1人を逮捕した。商務省産業安全保障局(BIS)で輸出管理の執行を担当するマシュー・アクセルロッド次官補は「今回の発表は、米国の最も機密性の高い技術を世界で最も危険な者の手に渡さないという、米国の揺るぎない使命を示す最新の事例だ」と述べ、成果を強調している。

米国連邦議会でも、輸出管理の執行強化を求める動きがある。上院民主党のシェロッド・ブラウン銀行・住宅・都市問題委員長(オハイオ州)、ジャック・リード議員(ロードアイランド州)、ボブ・メネンデス議員(ニュージャージー州)、マーク・ワーナー議員(バージニア州)は2月6日、ジョー・バイデン大統領に対し、輸出管理の執行強化に向け、BISの2025会計年度(2024年10月~2025年9月)予算の拡充を求める書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを送付した。書簡では、米国の国家安全保障政策におけるBISの重要性を強調したほか、商務省のジーナ・レモンド長官の講演を引用しつつ、「より筋肉質」な商務省を構築する必要があるとしている。なお、米国メディアによると、バイデン大統領は3月11日に2025会計年度予算案(予算教書)を議会に提出する(ブルームバーグ2月2日、注3)。

(注1)アトランタ、ボストン、シカゴ、ダラス、ヒューストン、ロサンゼルス、マイアミ、ニューヨーク、サンノゼ、フェニックス、ポートランド、首都ワシントン。このほか、司法省のマシュー・オルセン次官補はサミットで、新たに3つの都市圏に対象を拡大したと明らかにした。なお、記者発表資料中では具体都市圏は明らかにされていない。

(注2)重度のEAR違反者に対する禁止命令。禁止される事項は、違反内容によって異なる。

(注3)一方で、共和党の主要議員は、BISの単純な予算増には反対している(2023年12月13日記事参照)。

(葛西泰介)

(米国、中国、イラン)

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