中央アジアとロシアで堅実な経済成長、ジェトロがウェビナー

(ロシア、中央アジア、コーカサス)

調査部欧州課

2024年02月14日

ロシアによるウクライナ侵攻から2年がたとうとしている。ロシアについては、侵攻当初の予想と異なり、ロシア政府のみならず主要国際機関の経済見通しは上方修正が続く。中央アジアも鉱物資源の輸出増などにより経済が好調だ。ジェトロは2月7日にロシア、中央アジア、コーカサス地域を管轄する現地事務所長が登壇するオンラインセミナーを開催し、経済・ビジネス環境の現状と2024年の展望について解説した。

ジェトロ・モスクワ事務所の梅津哲也所長は、「部分動員令」(注1)など、国民の間に漠然とした不安はあるが、生活環境、治安状況は安定しているとロシア国内の情勢を説明した。ビジネス面では、ロシアは日米欧の制裁に対して為替管理、事業譲渡の際の許認可導入などの対抗措置を導入し、外国企業は身動きがとりにくくなりつつあるが、ロシア市場は一定の経済力を維持しており、ポテンシャルのある市場であることは変わらないと指摘した。その一方で、貿易構造や原油価格と為替レートをみると、ロシア政府が主張する「産業の新たな経済条件への適応」は必ずしも達成できていないとして、ロシア経済の先行きの見極めが引き続き重要と述べた。

タシケント事務所の高橋淳所長によると、2023年の中央アジア経済は、資源価格が比較的高値で推移し鉱物資源の輸出が順調だったこと、各国政府が積極的な財政出動を行ったことで、好調だったと述べた。2024年は、経済は安定的に成長することが見込まれているものの、インフラの老朽化や再生可能エネルギー発電、新規火力発電所の本格的な稼働は数年後になることから、需要が急拡大する電力や深刻化する環境問題で水の供給に問題が生じ、成長が頭打ちになる可能性があると指摘した。欧米諸国によるロシアへの制裁により、同国からの投資が停滞しているほか、国営企業の民営化など国内の経済改革に遅れが生じる可能性があるため、日系中小企業の間で関心が高まる人材・ITビジネスが中央アジアで定着するかどうかの重要な年になると指摘した。

コーカサス3カ国のうち、アゼルバイジャン、ジョージアについては小林浩人イスタンブール事務所長が、アルメニアについては梅津所長が説明した。アゼルバイジャンは中央回廊(注2)、南北回廊(注3)の交通の要衝としての役割を強化している点、ジョージアは規制の少なさや英語が広く通用することからビジネス参入障壁が低い点、アルメニアはITを中心に若手高度人材が豊富にある点などが特徴として挙げられた。3カ国ともロシアによるウクライナ侵攻の影響により、部分動員を嫌ったロシアからの退避というかたちで人材・資本が流入していることが指摘された。

(注1)ウラジーミル・プーチン大統領は、2022年9月21日付の大統領令第647号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「ロシア連邦の部分動員の発表について」で、ロシアにおいて第二次世界大戦以降初めての動員令を出した。

(注2)ジェトロの調査レポート「南コーカサス諸国産業・投資概況~アゼルバイジャン アルメニア ジョージアの物流を中心に~PDFファイル(4.1MB)」(2017年8月)を参照。

(注3)イランなどを経由して、インドとロシアを結ぶ複合輸送網。

(後藤大輝)

(ロシア、中央アジア、コーカサス)

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