人口増加で経済成長の見込みも通貨安やインフレなど課題、ジェトロ・アフリカ所長ウェビナー開催

(アフリカ、ナイジェリア、ケニア)

調査部中東アフリカ課

2024年02月08日

ジェトロは2月6日、ウェビナー「現地所長が語る!-2024年のケニア・ナイジェリアビジネスの展望-」を開催した。ラゴス事務所とナイロビ事務所の所長が登壇し、各国の最新動向と今後の展望について講演した。

ナイジェリアでは、人口増加による経済成長が見られ、産業別では金融・保険関連が好調だ。また、2023年9月にライトレール路線「ブルーライン」が開通(2023年9月15日記事参照)するなど、インフラ整備も進んでいる。さらに、同国では医療や産業機械などの分野において、西アフリカで最大規模の展示会が開催されるなど、地域のビジネス拠点でもある。

一方で、ナイジェリアでは、外貨不足やインフレなどにより厳しい投資環境が続いているという。貧富の格差が大きく、消費者は価格にシビアなため、インフレは消費行動に影響している。さらに、為替が変動レート制に移行して以降、現地通貨ナイラ安が進み、この1年間で対ドルでの価値は半減した。また、主要産業の石油産業においては、国内の老朽化した精油設備のリハビリが進まず石油の生産量は低迷している。石油の生産量はリハビリの進展、新しい精油施設の建設などにより徐々に増加の見込みだが、本格稼働に至っておらず外貨収入に影響を与えている。

ケニアでは、2023年の実質GDP成長率が5%となった。産業別では農業分野と観光分野が好調だったが、製造業がふるわなかった。財政難もあり、経済運営は厳しい状況が続いている。農業分野では主要な輸出品の花、コーヒー、茶の輸出が好調だった。公共調達を含む自動車の新規登録台数は安定しているが、低所得層向けの二輪・三輪自動車の新車登録台数は急激な縮小をみせた。

アフリカではガーナ、ザンビア、エチオピアがデフォルト(債務不履行)に陥る中、ケニアでも債務のGDP比率は73%に達している。深刻な財政難を打開するため、政府は所得税、住宅税などを引き上げた。しかし、これらの増税制度の運用が不透明な点もあり、ビジネスを行う上での課題となっている。一方で、米国モデルナがmRNAワクチンの生産拠点を設置し、ケニアから米国向けにモデルナ関連の医薬品の輸出が増えている。そのほか、電気自動車(EV)などへの投資もある。スタートアップの状況をみると、VC(ベンチャーキャピタル)投資は件数で35%減となったが、3Dプリンターによる住宅建設を手掛ける企業などイノベーションの実験場としての地位は変わらないという。

ナイジェリア、ケニアとも現時点ではビジネス環境は良いとはいえないが、中国系の企業が積極的に進出している状況が紹介された。

同ウェビナーは、2月13日から4月15日までアーカイブで配信する。

(井澤壌士)

(アフリカ、ナイジェリア、ケニア)

ビジネス短信 d873409f7cdfbe65