プーチン大統領、年次教書演説の内容実現のための各種指示を発表

(ロシア)

調査部欧州課

2024年04月09日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は3月30日、2024年の年次教書演説(2024年3月12日記事参照)で述べた内容の実現に向け、合計165に上る各種指示を発表した(添付資料表参照)。ほとんどのものは連邦政府が実施主体となり、地方政府、中央銀行、政府関係機関などと調整しながら具体策を立案する。

一連の指示の冒頭には、経済発展に関する項目が列挙された。2030年までにGDP(購買力平価換算)で世界4位まで引き上げるとの目標を掲げ、a.農産品の生産・輸出増、b.製造分野の付加価値向上、c.非資源・非エネルギー輸出の拡大、d.研究開発投資の拡大などを列挙した。

国内での製造業振興に密接にかかわる「技術主権」(注1)に関しては、食品、無人航空機、自動化・ロボット化、自動運転を含む交通モビリティー、DX(デジタルトランスフォーメーション)、新素材・化学、宇宙工学、原子力を含む新エネルギーなどで新たに計画を立案し、実行することを求めた。

年次教書で大きく言及された社会対策に関しては、新規国家プロジェクトである「家族」「長寿・健康」などに向け2025~2030年に1兆4,000億ルーブル(約2兆2,400億円、1ルーブル=約1.6円)以上の予算措置を求めた。年次教書では、出生数増加に関して、a.貧困状態にある多子家庭に対する生活保護の拡充、b.地方政府への補助金支給を通じた各地域の実情に合わせた対策、c.住宅建設の一層の促進と3人以上の子供を持つ家庭の住宅ローン補助、d.税金の控除や給付金の支給などを通じた生活基盤の強化、などが盛り込まれていた。教育関連では、教員となる人材の育成を含め初等・中等教育環境の抜本的な整備を目指す。CIS諸国や諸外国でのロシア語教育、文化普及に関する項目も盛り込まれた。

税制では、2025年1月以降、簡易税制(注2)の段階的な廃止について新たに含めた。年次教書で述べられた企業、個人に対する累進課税制度については、すでに政府から議会に対し原案が提示されていることから、今回の一連の指示には含まれなかった。

(注1)世界的なサプライチェーンからの切り離しなどで、ロシア国内での生産が停止したことなどを背景に、特に西側諸国を中心とした外国からの技術や部品供給に頼らない独自の開発やサプライチェーンの構築を目指す動き。

(注2)通常、企業利潤税(法人税)率は20%だが、従業員数や売り上げ規模など一定の条件を満たす場合、6%または15%の低減税率の適用が可能となる。

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