経済発展省、2027年までの経済発展見通しを上方修正

(ロシア)

調査部欧州課

2024年05月01日

ロシア経済発展省は4月26日、2027年までの中期経済発展見通しを公表した(添付資料表参照)。それによると、2024年の実質GDP成長率見通しは前回(2023年9月)から0.5ポイント上昇の2.8%(注1)。マクシム・レシェトニコフ経済発展相は4月23日に行われた閣議で「2023年の実質GDP成長率は3.6%、景気回復傾向は2024年に入っても継続している」と、ロシア経済は引き続き好調との見方を示した。2025年以降は2.3~2.4%の成長を見越している。

2024年の経済見通しを上方修正した背景には、投資と消費の拡大による好調な内需がある。投資は前回見通しと同じく、前年比2.3%増の見通しだが、レシェトニコフ経済発展相は2023年の投資が9.8%増だったとして、投資の伸びは依然として大きいと強調した。消費面では、小売売上高は7.7%増(前回比4.1ポイント増)を見込む。国内生産の回復による供給の適正化や、賃金を中心とした所得の伸びが消費の拡大を支えるとしている。

ロシアの経済回復が進んでいることは国際金融機関も認めており、IMFは2024年4月に改定した世界経済見通しで、2024年のロシアの経済成長を前回から0.6ポイント引き上げ、3.2%としている(2024年4月26日記事参照)。世界銀行も同様に、前回見通しから0.9ポイント引き上げて2.2%とした。

レシェトニコフ経済発展相はリスク要因として、対外的には世界経済の減速や対ロシア経済制裁の継続による悪影響、国内的には労働市場の逼迫による供給不足を懸念しつつ、「この見通しは技術主権(注2)による国内産業の振興や、投資活動に向けた支援策などによる政府の対策を考慮したもので、現実的だ」と強調した。

ロシアのエコノミストの多くは、この見通しを現実的なものと評価する。その一方で、多額の財政支出の継続を前提としたものであることや、2024年中に予定される税制の大幅な変更など不確定要素も多いとして、今後の経済動向には引き続き注視が必要との見方もある(RBK4月23日)。

経済発展省の中期経済見通しは、連邦予算策定の主要参考指標とされるもので、毎年秋と春に公表される。

(注1)基本シナリオの場合。見通しでは、世界経済の減速や対ロシア経済制裁の強化などにより、これを下回る可能性も見越した「悲観シナリオ」も想定している。

(注2)世界的なサプライチェーンからの切り離しなどで、ロシア国内での生産が停止したことなどを背景に、特に西側諸国を中心とした外国からの技術や部品供給に頼らない独自の開発やサプライチェーンの構築を目指す動き。

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