米商務省、半導体の輸出管理強化をあらためて表明、対中輸出許可取り消し報道も

(米国、中国、ロシア、ウクライナ)

ニューヨーク発

2024年05月10日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は5月8日、輸出管理の執行を担当するマシュー・アクセルロッド次官補が、カリフォルニア州ロサンゼルスで行われた半導体サミットで講演したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同次官補は、安全保障面における半導体の重要性を強調し、中国やロシアへの輸出管理強化の必要性を訴えた。

講演で、アクセルロッド次官補は「半導体ほどわれわれにとって優先順位の高い技術はない」「半導体は私のチームの仕事の中心にある」と、輸出管理における半導体の重要性を強調した。その上で、中国政府が米国の先端半導体を使って軍事力の現代化や人権侵害を行えないよう「中国が先端半導体を入手する能力を、厳しく管理する」と述べた。

また、ウクライナへの侵攻を続けるロシアの戦争遂行能力低下のための取り組みにおいても、半導体の輸出管理に重点を置いているとした。輸出管理の執行強化には、「破壊的技術ストライクフォース」を例示し(2024年2月15日記事参照)、同ストライクフォースの下、現在までに26人の被疑者に対して16件の刑事起訴を行い、そのうち14人は半導体を含む電子部品の調達に関連して起訴されていると述べた(注1)。一方で、ウクライナで回収されたロシアのミサイルやドローンに米国製の半導体などが搭載され続けていると明かし、現在、直面している安全保障上の危機に対応するには、政府の取り組みだけでは不十分だとして、産業界への協力を呼びかけた。同次官補は、ロシアに半導体などを出荷し続けている600以上の外国の事業体などを特定したとした上で、「これら600の外国当事者への出荷を停止するよう米国企業に要請した」と述べた。

なお、「ファイナンシャル・タイムズ(FT)」紙電子版(5月8日)は、アクセルロッド次官補の講演と同日、商務省が米国半導体大手のインテルとクアルコムの、華為技術(ファーウェイ)向け輸出許可を取り消した、と報道した。FTの取材に対して、商務省の担当者は輸出許可を取り消した米国企業を明かさなかったものの、インテルはファーウェイ向けに輸出できないことから、第2四半期の売上高が予想よりも下回ると述べている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版5月8日、注2)。ファーウェイは、輸出管理規則(EAR)のエンティティー・リスト(EL)に掲載され、米国製品(物品、ソフトウエア、技術)の輸出・再輸出などを申請しても原則不許可となっているものの、半数以上が輸出許可を得ていることが過去に議会で問題視されていた(2021年10月26日記事参照、注3)。

(注1)破壊的技術ストライクフォースなどの取り組みの下、制裁対象となっているロシアの事業体に対して、機密性の高い米国のドローン技術の輸出を企てた疑いで、ニューヨーク州在住の人物が罪を認めたと4月に発表されている(2024年5月2日記事参照)。

(注2)ただし、インテルの第2四半期の売上高は、前回予想の125億ドルから135億ドルの範囲内にとどまり、通期では増加すると述べている。

(注3)中国向けの先端半導体の輸出に対しては、厳しい規則が設けられている(2023年10月18日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、中国、ロシア、ウクライナ)

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