2022年のEV販売台数が過去最高を更新(台湾)

2023年7月13日

業界団体の台湾区車両工業同業公会によると、2022年の台湾域内での自動車生産台数は前年比1.5%減の26万1,263台、このうち台湾域内で販売された台数(輸入車は含まず、輸出向けを含む)は3.8%減の22万5,801台となった。生産台数は2021年に7年ぶりに増加したが、2022年は再び減少した(図参照)。輸出台数は3万6,592台だった。

図:台湾の自動車生産・販売台数の推移
生産台数は、2008年182,974 台、2009年226,356 台、2010年303,456 台、2011年343,296 台、2012年339,038 台、2013年338,720 台、2014年379,223 台、2015年351,085 台、2016年309,531 台、2017年291,563 台、2018年253,241 台、2019年251,304 台、2020年245,615 台、2021年265,320 台、2022年261,263台。販売台数(台湾域内)は、2008年178,809 台、2009年229,450 台、2010年252,530 台、2011年285,790 台、2012年270,078 台、2013年258,753 台、2014年282,130 台、2015年262,593 台、2016年262,346 台、2017年255,770 台、2018年234,589 台、2019年219,075 台、2020年226,870 台、2021年234,780 台、2022年225,801台。輸出台数は2008年7,196 台、2009年9,655 台、2010年36,914 台、2011年54,785 台、2012年70,906 台、2013年82,427 台、2014年95,518 台、2015年83,307 台、2016年51,463 台、2017年39,519 台、2018年23,982 台、2019年32,482 台、2020年19,133 台、2021年30,014 台、2022年36,592台。生産台数伸び率(前年比)は、2008年△ 35.4%、2009年23.7%、2010年34.1%、2011年13.1%、2012年△ 1.2%、2013年△ 0.1%、2014年12.0%、2015年△ 7.4%、2016年△ 11.8%、2017年△ 5.8%、2018年△ 13.1%、2019年△ 0.8%、2020年△ 2.3%、2021年8.0%、2022年△1.5%。販売台数伸び率(台湾域内、前年比)は、2008年△ 35.3%、2009年28.3%、2010年10.1%、2011年13.2%、2012年△ 5.5%、2013年△ 4.2%、2014年9.0%、2015年△ 6.9%、2016年△ 0.1%、2017年△ 2.5%、2018年△ 8.3%、2019年△ 6.6%、2020年3.6%、2021年3.5%、2022年△3.8%。

注:販売台数は輸入車を含まず、輸出向けを含む。
出所:台湾区車両工業同業公会

自動車生産台数は増加から一転、2022年は再び減少へ

メーカー別に2022年の生産台数をみると、1位でトヨタと日野自動車が出資する国瑞汽車(構成比50.5%)は前年比5.6%増の13万1,814台と2年連続で増加した。3位の台湾本田汽車(10.2%)も5.6%増の2万6,778台で、前年(7.6%減)からプラスに転じた。一方、2位の中華汽車(15.3%)は前年(1.7%減)より減少幅が拡大、8.7%減と引き続きマイナスで推移している。そのほか、4位の裕隆汽車製造(9.6%、注1)が18.0%減の2万4,962台、5位の福特六和汽車(8.9%)が15.2%減の2万3,246台となった(表1参照)。

表1:台湾のメーカー別自動車生産台数(単位:台、%、ポイント)(△はマイナス値)
メーカー名 2020年 2021年 2022年
生産台数 生産台数 生産台数 シェア 伸び率 寄与度
国瑞汽車 99,567 124,815 131,814 50.5 5.6 2.6
中華汽車 44,620 43,848 40,044 15.3 △ 8.7 △ 1.4
台湾本田汽車 27,423 25,350 26,778 10.2 5.6 0.5
裕隆汽車製造 37,929 30,460 24,962 9.6 △ 18.0 △ 2.1
福特六和汽車 24,568 27,417 23,246 8.9 △ 15.2 △ 1.6
三陽工業 10,541 12,072 13,181 5.0 9.2 0.4
台塑汽車 967 1,358 1,238 0.5 △ 8.8 △ 0.0
合計 245,615 265,320 261,263 100.0 △ 1.5 △ 1.5

出所:台湾区車両工業同業公会資料を基に作成

メーカー別に2022年の台湾域内の販売台数をみると、シェア3位の台湾本田汽車(前年比5.8%増)を除き、シェア1位の国瑞汽車(0.5%減)、2位の中華汽車(5.9%減)、4位の裕隆汽車製造(14.2%減)、5位の福特六和汽車(15.8%減)はいずれも減少した(表2参照)。

表2:台湾のメーカー別自動車域内販売台数(単位:台、%、ポイント)(△はマイナス値)
メーカー名 2020年 2021年 2022年
販売台数 販売台数 販売台数 シェア 伸び率 寄与度
国瑞汽車 78,012 97,516 96,982 43.0 △ 0.5 △ 0.2
中華汽車 46,731 41,898 39,422 17.5 △ 5.9 △ 1.1
台湾本田汽車 27,576 25,274 26,748 11.8 5.8 0.6
裕隆汽車製造 37,282 30,079 25,805 11.4 △ 14.2 △ 1.8
福特六和汽車 25,243 26,652 22,444 9.9 △ 15.8 △ 1.8
三陽工業 10,889 11,921 13,115 5.8 10.0 0.5
台塑汽車 1,137 1,440 1,285 0.6 △ 10.8 △ 0.1
合計 226,870 234,780 225,801 100.0 △ 3.8 △ 3.8

注:販売台数は輸入車を含まず、輸出向けを含む。
出所:台湾区車両工業同業公会資料を基に作成

世界的な自動車不足などの影響で、輸入車のシェアさらに低下

自動車市場関連の業界サイト「U-CAR」が2023年1月3日に発表した「2022年12月台湾自動車市場販売報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、表2に含まれない2022年の輸入車の販売台数は前年比6.0%減の18万9,141台だった。台湾域内の新車販売台数全体に占める輸入車の割合は44.0%で、前年の44.7%から微減となった(注2)。減少の背景には、車載半導体の不足などによる世界的な自動車不足の影響などがあるとしている。

ブランド別のシェアをみると、1位のトヨタ(構成比16.9%)は、前年比23.1%減の3万1,878台、2位のメルセデス・ベンツ(12.4%)は16.1%減の2万3,383台、3位のレクサス(10.2%)は6.1%減の1万9,327台、4位のBMW(8.8%)は9.6%減の1万6,718台、5位のマツダ(8.1%)は5.9%増の1万5,389台だった。2021年から順位の変動はなかった。

2022年EV販売台数が1万台突破

また、U-CARが1月17日に発表した「2022年度台湾自動車市場販売報告:電気自動車トップ10外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、2022年に域内での電気自動車(EV)販売台数は前年比2.3倍の1万6,120台となり、初めて1万台を突破した(注3)。EVブランドも2021年の10社から16社まで増加し、域内で販売される域内生産車と輸入車に占めるEVの比率は前年の1.5%から3.7%に上昇した。ブランド別(上位10位)の販売台数をみると、1位はテスラ(構成比72.0%)、2位はBMW(6.0%)、3位ボルボ(4.3%)だった。トヨタ(0.8%)は9位、日産(0.7%)は10位にランクインした。

「U-CAR」によると、「2022年もEV販売は過去最高を更新した。台湾は今まさにEV化の転換期にあり、今後も市場には多くのEVが投入されるだろう」と分析している。

ロードマップに対応、域内でEV化推進

2022年3月に台湾の国家発展委員会が発表した「2050年ネットゼロ排出ロードマップ」「2050年ネットゼロ排出ロードマップ」(以下、ロードマップ)に対応し(2022年4月4日付ビジネス短信2022年5月2日付2022年5月19日付地域・分析レポート参照)、域内でEV化を促進するための諸制度や社会基盤を整備する動きが加速している。

2022年5月、公営電力会社の台湾電力は同月30日からEV向けなどに新たな電気料金の適用を開始すると発表した。今回の電気料金の特徴は、一般の電気料金と比べて基本料金を抑えつつ、ピーク時間とオフピーク時間の価格差を拡大し、割安なオフピーク時間帯を長く設定したことなどが挙げられる。オフピーク時間での電気利用を促し、電力の安定供給に加え、EVシフト促進を図ることが狙いだ。

2022年8月、台湾交通部はロードマップの「12のキー戦略」に基づき、「12のキー戦略」うちの1つの「輸送機器の電動化とゼロカーボン化」(注4)を積極的に推進していくことを明らかにしている。その3大戦略〔(1)「電動輸送機器の数量増加」、(2)「使用環境の完備」、(3)「産業技術の高度化・転換」〕のうち、(1)では、路線バス電動化推進計画の採用や、2023年からディーゼルバスへの補助金取りやめ、2030年までに市街地の1万1,700台を電気バスに切り替え、タクシーの電動化なども進める方針だ。

なお、交通部が作成し、国家発展委員会が2023年4月に採択した「路線バス電動化推進計画(2024年~2030年)」では、2030年までにディーゼルエンジン車両を淘汰(とうた)し、路線バスの全面電動化を目指すとしている。

路線バスの全面電動化については、域内でも台北市が先行して取り組み、2018年から電動化を推し進めている。

台湾をEV開発の中核担う存在に

電子機器受託生産(EMS)で世界最大手の台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は、2022年6月に高雄市でのEV向け電池セルの研究開発拠点の建設を、同年10月には同社が開発したEVの新しいモデル「モデルB」「モデルV」を発表するなど(2022年6月17日付2022年10月24日付ビジネス短信参照)、EV開発を積極化している。

同年11月にインドネシアのバリ島で開催されたG20ビジネスサミット(B20サミット)で講演を行った同社の劉揚偉董事長は「EVのエコシステム構築には、産業の転換と高度化が1つのカギとなるが、その点で台湾は信頼できるパートナーになるだろう」と語った(中央通訊社2022年11月14日)。

2023年6月時点では、同社主導で2020年10月に立ち上げたEV向けハードウエアとソフトウエアのオープンプラットフォーム「MIH(Mobility In Harmony)」(注5)がますます規模を拡大している。MIHは、開発者がMIH上でEVに関連するキー技術やツールにアクセスできるようにすることで、EV産業の参入障壁を排除し、多くの企業の参入を奨励、産業全体の発展を狙う。MIHを運営するMIHコンソーシアムの公式ウェブサイトによると、2023年6月14日時点で参画メンバーは2,657社になった。

MIHコンソーシアムの鄭顕聡執行長は2023年4月26日、MIHの今後の海外展開について「まずは台湾によい基盤を作り、台湾をEVの研究開発拠点にしていきたい」として、域内での事業展開の強化を強調するとともに、将来的に中国との協力機会があることにも触れた(中央通訊社2022年4月26日)。

なお、台湾経済部技術処は2023年4月12日、企業などによるEVと新エネルギー車(NEV)の研究開発(R&D)強化のため、関連企業などに今後4年間で50億台湾元(約230億円、1台湾元=約4.6円)を補助する計画を明らかにしている。

2023年の自動車販売、回復を期待

台湾行政院主計総処は、2023年の実質GDP成長率を前年比2.04%と予測した(2023年6月1日付ビジネス短信参照)。とくに内需では、新型コロナウイルス対策に伴う各国の水際規制の緩和による海外旅行の需要増をはじめ、外食、ショッピング、レジャーなどの需要回復、当局による域内と訪台個人観光客向けに消費刺激策(現金給付)の実施などにより、民間消費が内需を牽引すると予測している。

また、台湾経済部が6月26日に発表した5月の自動車・二輪車業の卸売・小売業営業額統計によると、卸売業は、車載用半導体不足の緩和によって納車率が上昇し、前年同月比37.9%増の810億台湾元だった。小売業は、新車の供給増や納車率の上昇、一部新モデルの需要増により、37.2%増の701億台湾元だった。卸・小売業ともに、これで4カ月連続のプラスとなった。なお、2023年1月~5月累計では、卸売業が前年同期比14.2%増の3,731億台湾元、小売業が16.5%増の3,206億台湾元と、それぞれ2桁増だった。2023年は経済成長率が前年より鈍化傾向にあるものの、車載用半導体不足の緩和や、EV普及、足元の自動車関連卸・小売業の好調などのプラス要因により、自動車販売が回復することが期待される。


注1:
生産台数には、日産との合弁の裕隆日産汽車なども含む。
注2:
U-CARが発表する台湾域内の新車販売台数(42万9,731台)に基づく割合。なお、U-CARが発表する「域内での輸入車販売台数(18万9,141台)」と、台湾区車両工業同業公会が発表する「域内で生産の自動車のうち、域内で販売された台数(22万5,801台)」を足しあげた合計(41万4,942台)は、前述のU-CAR発表の域内新車販売台数とは一致しない。
注3:
EVの販売台数には、エクステンデッド・レンジ電気自動車(EREV)は含まない。EREVは、航続距離を延ばすために小型の発電用エンジンを搭載したEVを指す。ハイブリッド車と異なり、EREVは電気が不足したときに限り、エンジンで発電を行う。
注4:
「12のキー戦略」は「1.風力発電、太陽光発電」「2.水素エネルギー」「3.将来的なエネルギー(地熱発電・海洋発電・バイオマス発電)」「4.送電・蓄電システム」「5.省エネルギー」「6.二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)」「7.輸送機器の電動化とゼロカーボン化」「8.資源循環と廃棄ゼロ」「9.自然の二酸化炭素吸収源」「10.ネットゼロ排出のグリーンな生活」「11.グリーン金融」「12.公正な社会への転換」。そのうち「7.輸送機器の電動化とゼロカーボン化」の概要については以下のとおり。電気自動車の上流と下流関連産業を発展させ、技術の成熟度に応じてバイク、乗用車、バスの将来の市場シェア目標を設定する。蓄電、充電機器などのインフラの設置と技術の研究開発を調整して組み合わせる。
注5:
2021年7月にMIHコンソーシアムを発足、現在MIHコンソーシアムが「MIH」を運営している。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 アドバイザー
嶋 亜弥子(しま あやこ)
2017年4月から現職。