「Hostex2024」開催、観光業が市場参入のヒントになる可能性(南ア)

2024年5月21日

南アフリカ共和国(以下、南ア)統計局は2024年3月、重要セクターの1つである観光業の過去3年間の動向について発表した。GDPにおける観光業の寄与率は、2020年2.1%、2021年2.3%、2022年で3.5%と大幅に回復しているが、いまだ2019年の3.7%の水準まで戻っていない。

一方で、観光客数は増加している。観光省によると、2023年の総観光客数は850万人に達し、2022年と比較すると48.9%増だった。世界的な観光への関心の高まりや南ア向け直行便の再開などが後押しとなり、政府発表によれば、2023年の隣国ジンバブエからの来訪者が前年比70.8%増の約210万人、ビザの簡素化を実施したケニアは99%増の約4万2,000人だった。

歴史的にもつながりの強い欧州からの来訪者は堅調で、2023年は前年比8.2%増の約120万人が南アを訪問した。欧州では英国がトップだった。

アジアからは、インドが最も多く前年比43.7%増の約8万人、中国からの来訪者数は約3万7,000人で、2022年比で約3倍を記録した。

中国からの直行便が2023年4月に再開した影響は大きく、この1年間においてショッピングモールで中華系の人々を見かける機会も増えた。

仕事と休暇を組み合わせた旅行を指す「ブレジャートラベル」の増加も、観光業には追い風だ。特にケープタウンは、中心地から観光名所(喜望峰やワイナリー、ボルダーズビーチなど)へのアクセスが比較的容易で、出張中の旅行者が仕事の合間に自然あふれる観光地で一息つくことができる。


ボルダーズビーチでは国立公園内でケープペンギンの鑑賞が可能。
市内から車で1時間弱(ジェトロ撮影)

ジェトロは2023年に、観光業関連の展示会でプロモーションを行った(2023年5月30日付ビジネス短信参照)。南アは経済格差が大きく、日本の高価格・高付加価値な製品が一般消費財市場で広く受け入れられるのは容易ではない。ニッチな市場にはなるが、可処分所得の多い層が関わる観光業のような市場をターゲットにするのも1つの参入手段であると考えている。

「Hostex2024」開催、ビジネス関係者に活気

2024 年3月3日から5日にかけて、観光業向けの専門見本市である「Hostex2024」がヨハネスブルクで開催された。この展示会は1986年から2年に1回開催されており、同業界に関わるバイヤー、ホテル経営者やシェフなどが集まる。ジェトロは、主催者のマット・ルー国際ビジネス・マネージャーにインタビューを行った。


Hostex2024の入り口外観(ジェトロ撮影)
質問:
展示会の概要は。
答え:
本展示会は「機材」「フード&ドリンク」「ティー&コーヒー」「業務用家具」「テクノロジー」「サステイナビリティ」の6つの大きなカテゴリーがあり、出展企業が新製品や、最先端技術を発表する場になっている。来場者は約4,400人。展示会には90社以上の出展者が集まった。出展者は約22カ国で、イタリア、中国、ブラジル、インドがパビリオンを設置した。

アイスクリームの実演に大勢の人が関心を寄せる(ジェトロ撮影)

イタリアパビリオン内の製品展示(ジェトロ撮影)
質問:
この業界のトレンドは何か。
答え:
各社は、自社の売りになるような最先端の技術や機器、持続可能な食品、飲料などを探し求めている。コロナ禍時と比較して、この業界は顕著に回復しており、「Hostex2024」への新規出店者が増加した。業界関係者が非常に前向きにビジネスを再開していることがわかる。南アの観光産業はワーケーションやブレジャートラベルも好調で、ビジネスは多様化しつつある。従来のレジャー旅行の枠を超えて、経済面でも大きなビジネスチャンスを生んでおり、外資系企業による観光業での南ア投資に関心が高まっていると感じる。生活コストが上昇し、一般消費者は支出に厳しくなっている。お金を支払う商品やサービスに対してさらなる価値を求めているため、バイヤーもより良い、かつ目新しいものを探している。
質問:
日本企業がこの業界に参入できる可能性は。
答え:
日本企業が提供するサービスや製品には、一般的に高品質だが高価であるという印象が強い。ただし、ニッチな製品であれば、南アの市場でも差別化できる。特に「機器」「食品・飲料」「テクノロジー」の分野であれば、日本製品は競争力があると思う。南アは海外からの観光客も多いため、南ア人に合わせて形状の変更などローカライズしなくても、バイヤーが関心を持つ可能性があると考える。しかし、日本企業の製品のどこに強みがあるか、どの製品なら可能性があるかは、市場やニーズに合わせて明確に特定していく必要があることを強調したい。ブランド力に乏しい日本製品は、見本市を含む様々なプラットフォームを通して新製品を発表し、知名度を高めていく必要がある。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
堀内 千浪(ほりうち ちなみ)
2014年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ浜松などを経て、2021年8月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
トラスト・ムブトゥンガイ
ジンバブエ出身。2011年から、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所勤務。主に南部アフリカの経済・産業調査に従事。