特集:アフリカにおける医療機器ビジネスの可能性医療市場は公共調達中心、長期的な開拓に向けた関係構築に理解を(エチオピア)

2021年9月9日

エチオピアのファーマシェアカンパニー(Pharma S.C.、1958年設立、従業員約25人、年間売り上げ200万~300万ドル)は、医療品を扱う企業としてエチオピア最古参の部類に入る。医薬品部門と医療・検査機器を扱う部門を有し、麻酔科用機械などを含む手術室や集中治療室に必要な機械・器具、小児科(新生児用保育器など)、歯科、眼科領域に加え、糖尿病や不妊治療などで必要とされる治療機器も取り扱う。そのほか、各種診断に欠かせない検査機器も扱い、新型コロナウイルス感染拡大で需要が高まった酸素供給装置にも関心を有している。顧客は、エチオピア政府やNGO、私立病院などが中心だ。創業家のマルコス・ヒルデブランド社長補佐に、エチオピア市場の特徴や日本の医療資機材販路拡大へのアドバイスを聞いた(注)。

公共調達中心の市場、長期的な取り組み必要

質問:
エチオピア市場の特徴は。
答え:
兄が関連会社を経営するケニアでは、より市場経済的で民間需要もあるが、エチオピアの医療関係市場はほぼ公共調達が全てといっていいだろう。政府関係の調達の中心は、公共調達資産管理庁と、保健省傘下のエチオピア公共衛生研究所だ。国際的なNGOも熱心にエチオピアを支援しており、彼らが直接的・間接的に行う調達も当地でのビジネスでは大きな存在だ。少しずつ民間による購買も増えてはいるが、当面は公共調達中心のビジネスが続くため、エチオピアでは長期的な視点を持ってビジネスに取り組むことが欠かせない。3年や5年の期間目標を立てて短期で売り上げを求める企業には、エチオピア市場は向いていない。
質問:
取扱い製品を検討する際のポイントは。
答え:
製品そのものの信頼性はもちろん必要だが、企業倫理や市場への理解がより重要だ。調達が中心となるビジネスでは、毎年必ずその製品の調達があるとは限らない。ある年度に予算がつけば調達があり、そのためにエチオピア医薬品庁であらかじめ認証を取得しておく必要がある。この手続きには6カ月から10カ月要するなど、時間とコストがかかる。一度取得した認証は4年間有効で、この期間に調達があっても、適時の入札書類の準備のため、メーカーには追加的に必要となる製品情報や書類を求めることになる。こうした事情に協力的で、不備のない書類準備に協力を得られるか、納入した製品のアフターケアのための訓練や必要な人材育成に協力を得られるかが重要になる。
質問:
入札にはどのような種類があるか。
答え:
国際競争入札に付されるものと、国内向けのものとに大別できる。国際競争入札の場合、落札した外国製造業者には外貨で直接支払いされる。エチオピアの代理店には、手続き代行などの名目で製造業者が口銭を払うかたちだ。国内競争入札の場合、エチオピアの代理店が外国製造業者の商品を購入して納入することになる。この場合の支払いは、現地通貨(エチオピア・ブル)だ。外国製造業者との間では、エチオピアの外貨不足を念頭に、確認付き信用状での取引とするのが一般的だ。
質問:
日本企業へのアドバイスは。
答え:
商談会に当たり、何社かの日本企業が提案してきた医療消費財はニッチなものが多く、欧州など先進国では需要があるかもしれない。例えば、注射針だけを提案されても、注射器そのものとセットでなければ、入札にかかることもない。もっと汎用(はんよう)性の高い基礎的なものが求められる市場だ。他方で、そうした汎用医療消費財はそもそも中国や韓国などとの価格勝負になるのが現実だ。エチオピア市場を他のアフリカと同じ国として見ない方がいい。日本企業に限らないが、エチオピアの商習慣や人々のメンタリティーが他のアフリカ諸国と異なることにもっと理解を深める必要がある。当地で見聞きしている範囲でも、日本の医療関係機器の製造業者がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイや南アフリカ共和国の拠点からエチオピア市場を管轄するように切り替えたのは承知しているが、必ずしもそれらがうまくいっているとはいえないようだ。ドバイにいるインド系マネジャーの対応や、書類準備の質、南ア経済圏とも言えるアフリカ諸国向けの進め方や話し方が同じように当地で通じるということではない。地理的に近いから、あるいは同じ大陸上にあるからと、管轄を切り替えるのが必ずしもよいとはいえず、むしろ、遠くても欧州の拠点から管轄した方が関係を構築する上でも、対応能力という意味でも安心できる。また、調達がビジネスの中心なので、複数の代理店を設定したり、頻繁に代理店を変更したりすることも避けるべきだ。入札をめぐって受注・発注の双方が混乱するからだ。また、納入後のアフターサービスの責任の所在がわかりづらくなるのも、医療機器の分野では信用にもとると発注者に見なされるので、注意が必要だ。

注:
同社は2021年にジェトロが実施したアフリカ医療資機材商談会の参加企業。本稿は、事業実施のために事前に複数回、同社と調整、話をした内容をインタビュー形式にまとめたもの。
執筆者紹介
ジェトロ・アディスアベバ事務所 事務所長
関 隆夫(せき たかお)
2003年、ジェトロ入構。中東アフリカ課、ジェトロ・ナイロビ事務所、ジェトロ名古屋などを経て、2016年3月から現職として事務所立ち上げに従事。事業、調査、事務所運営全般からの学びを日本企業に還元している。