特集:タイ・インドネシア・ベトナムの自動車など主要産業政策と現地動向BCG経済、強みを生かし、外的要因に強靭な経済を(タイ)

2023年4月25日

「バイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデル」は2018年11月、タイの国家科学技術イノベーション政策委員会(STI)が、「BCG in Action」という白書を首相に提出したことが始まりだ。バイオ経済、循環型経済、グリーン経済の3つを統合、資源や文化の多様性というタイの強みを活用し、持続的な開発を目指すものだ。その後、STIを所管する高等教育・科学・研究イノベーション省(MHESI)が、同モデル推進のための戦略「BCG in Action: The New Sustainable Growth Engine」を公表(2019年)。対象分野を具体化しつつ、同モデルを軸に、経済を更に成長させる方針を示した。そして、2021年1月、BCG経済モデルを、国家戦略に据えることを閣議で承認した。本稿では、2022年2月に閣議承認された「BCG行動計画(2021~2027)」を参照しつつ、BCG経済モデルの取り組みの全体像を明らかにする。後段では、BCG経済モデルの対象領域のひとつである医療分野に注目、企業動向も併せて紹介する。

タイランド4.0と重なるBCGのコンセプト

タイ政府は、従来の経済発展が、生産拡大を重視した結果、不均衡な富の分配や、外的要因に対して脆弱(ぜいじゃく)な経済構造、また資源の枯渇や環境破壊といった問題につながったと分析。そのため、社会・環境・経済のバランスを保ちつつ、タイの比較優位を活用した経済成長を続けるため、産学官民連携で、BCG経済モデルを推進していく方針だ。

また、BCG経済モデルは、産業高度化に向けた国家の指針である「タイランド4.0」を支える政策でもある。具体的には、「タイランド4.0」の12の重点産業(Sカーブ産業)のうち、4つと重なる。すなわち、農業・食品、バイオ(バイオエネルギー、バイオマテリアル、バイオ化学)、医療・ウェルネス、観光・クリエイティブ経済だ。各分野の課題、目指すべき方向性は以下のとおりだ。

MHESI傘下の科学技術開発庁(NSTDA)によれば、農業・食品産業では、タイの労働人口の約3割が同産業に従事するも、GDPへの貢献度はわずか6.1%だ。そのため、BCG経済モデルを通じ、農業の生産性向上、高付加価値製品(例:機能性食品)の開発を推進。農家の所得向上、社会的格差の是正につなげる必要がある。

次に、バイオである。タイは、サトウキビ、キャッサバなどの主要な生産国にもかかわらず、これら資源が十分に活用されず、国家のエネルギーの6割以上は輸入されている。そのため、バイオマスをエネルギーや化学物質に変換するなど、付加価値を高めるためバイオリファイナリー技術を発達させる。

医療・ウェルネスでは、現状、タイの「国家必須医薬品リスト(National List of Essential Medicines :NLEM)」に掲載される医薬品の4割近くが国外から輸入されている。また、国民が消費する医薬品の7割が輸入品であり、海外依存度が高い。自国の医薬品開発能力を強化する必要もある。

そして、この医療・ウェルネスの発展は、医療ツーリズム推進にもつながり、観光・クリエイティブ経済の発展にも貢献する。観光はタイの主要産業であり、580万人以上の国民が同産業に従事している。これは、国内の全雇用者の15.5%に当たる。また、外国人観光客の訪問先は、バンコクを中心とする8都県に集中(全1都76県中)。これら地域では、過度な観光客増加が、環境破壊や犯罪などの社会問題につながることが懸念されている。各地の魅力を生かし、他の観光都市を開発、国全体で持続可能な観光産業を構築する必要がある。

政府のBCG推進体制と行動計画

タイ政府は、BCG経済モデルを推進するため、プラユット・チャンオーチャー首相を議長、NSTDAを事務局とするBCG政策委員会を設置。その下に、11の小委員会(法務、観光クリエイティブ産業、農業、バイオ多様性、食品、医療機器・デジタルヘルス、人材開発、技術革新・インフラ開発、エネルギー・化学バイオ、医薬品・ワクチン、循環型経済)を設置している(図1参照)。

図1:タイ政府のBCG経済モデル推進体制
タイ政府は、BCG経済モデルを推進するため、プラユット・チャンオーチャー首相を議長、NSTDAを事務局とするBCG政策委員会を設置。その下に、11の小委員会(法務、観光クリエイティブ産業、農業、バイオ多様性、食品、医療機器・デジタルヘルス、人材開発、技術革新・インフラ開発、エネルギー・化学バイオ、医薬品・ワクチン、循環型経済)を設置している。

出所:NSTDAからジェトロ作成(2022年12月時点)

タイ政府は、BCG経済モデルの取り組みを具体化するため、2022年2月、「BCG行動計画(2021~2027年)」を閣議承認。同計画の中で、(1)資源の保全・利用バランスを保った持続可能な開発の促進、(2)資本・創造性・アイデンティティ・先進技術を活用した、コミュニティや地域経済の強化、(3)BCG関連産業の持続可能な競争力向上、(4)グローバルな外的要因への強靭(きょうじん)性強化、という4つの戦略を策定。また、各戦略における指標(KPI)も設定している(参考1参照)。

参考:「BCG行動計画(2021~2027)」の戦略(4分野)と指標(KPI)

戦略1.資源の保全・利用バランスを保った持続可能な開発の促進
指標(KPI)
天然資源の消費量を25%削減
2005年比で温室効果ガス排出量を20~25%以上削減
50万ヘクタール以上の森林地帯を追加
戦略2.資本・創造性・アイデンティティ・先進技術を活用した、コミュニティや地域経済の強化
指標(KPI)
1,000万人以上の所得格差を改善
栄養不足人口の割合を5%以下に削減
高品質医療へアクセス可能な国民を現在より30万人以上増加
エネルギー自給自足型のコミュニティを20%増加
戦略3.BCG関連産業の持続可能な競争力向上
指標(KPI)
GDPを2018年比で1兆バーツ増加
高付加価値製品・サービスの割合を20%以上増加
地方の所得を50%以上増加
戦略4.グローバルな外的要因への強靭性強化
指標(KPI)
100万人以上の労働者のスキル向上
1,000社のBCG関連スタートアップやイノベーション型企業を創出
技術不足による国際収支悪化を20%減少(880億バーツ相当)
医療ヘルスケア機器の輸入を20%以上削減(200億バーツ相当)

出所:タイ政府の「BCG行動計画」からジェトロ作成

4つの戦略とKPI達成のため、BCG行動計画では、大きく13の取り組みが提案されている(参考2参照)。これらの取り組みを見ると、イノベーションの推進やスタートアップの競争力強化がうたわれる一方、各地の多様な文化や資源を活用し、観光促進や農産物の付加価値向上を図る方針だ。地域経済を活性化しようという政府の意図が読み取れる。

プラユット首相は、2022年2月7日に開催されたBCG政策委員会において、予算執行のガイドラインを策定し、「BCG行動計画」に記載の各種取り組みが着実に実施されること、各地域の実情に沿った取り組みを策定することを関連省庁に指示した。

また、BCG関連産業への投資促進については、タイ投資委員会(BOI)が優遇措置を企業に付与している。BOIによれば、2022年上半期における、同分野への直接投資申請は800億バーツ(約3,200億円、1バーツ=約4円)となり、対内直接投資総額の35%を占める。奨励対象となる事業には、医療機器や医薬品の製造、植物工場からの農産物生産、および植物由来のタンパク質の開発などが含まれる。

参考2:「BCG行動計画(2021~2027年)」で提案される取り組み(13種類)

  1. 1.生物資源、文化資本、および地域の伝統・知恵を収集したデジタルレポジトリの作成
    • 遺伝情報、生態系情報、製品・サービス、文化、伝統など、さまざまな資産や資本にかかるデータを定性・定量的に収集・統合するデータベースを開発。ビッグデータ分析を活用し、地域経済や観光産業の強化に貢献
  2. 2.産学官民連携による取り組み
    • 森林保護プロジェクトに従事する企業へのカーボンクレジット提供など
    • 動植物の繁殖、資源の管理にかかる研究開発を強化
  3. 3.BCG回廊の設置
    • 地域の需要・供給を考慮し、全国各地にBCG産業にかかる経済回廊を構築
    • BCG経済モデルの取り組み(農業の近代化、観光、貿易・投資、国内と世界経済の連携強化)を通じ、製品・サービスの開発・改善
  4. 4.農業の効率化、農産物の高品質・高付加価値化
    • 植物育種研究、高品質で安全な農産物の生産、高度な農場管理/物流管理システムの構築
    • 農産物の多様化による、農業関連GDPの向上
    • 農家のテクノロジーや知識へのアクセス向上
    • 持続可能な農業の促進
  5. 5.機械や衛生規範(GHP)の導入による、屋台や地域で販売される食品の品質・安全性向上
  6. 6.高付加価値製品の開発・製造によるバイオ経済の活性化(例:機能性素材・食品、医薬品、ワクチンなど)
  7. 7.BCG経済モデルから生まれた商品・サービスの需要創出
    • 地場企業が製造するBCG関連製品の政府調達促進プログラム
    • BCG関連製品を認証するラベル制度の構築
    • カーボンプライス/環境汚染者による費用負担ルールの導入などによるバイオ製品の競争力向上
    • エネルギー取引にかかる規制緩和
  8. 8.BCG経済モデルやカーボンニュートラルに即した持続可能なグリーン観光の促進
    • 新たな観光産業集積地の形成
  9. 9.環境技術や資金を活用、循環型経済を意識した持続可能な商品・サービスの開発・製造
  10. 10.各種製品・サービスの国際レベルへの品質向上
    • 研究開発や実証実験にかかる設備(例:パイロットプラント)の質向上
    • バイオ製品、医薬品、ワクチン、医療機器などの標準化、試験・認証・認定設備の高度化
    • 関連法規制の改正
  11. 11.BCG関連のスタートアップの支援
    • 起業家の技術・経営力の向上
    • 起業家のテクノロジーやイノベーションなどへのアクセス向上
    • 起業家の専門家や財源へのアクセス向上"
  12. 12.BCG経済モデルを推進する人材の育成
    • コミュニティや地域の人材、SME、スタートアップ、デイープテック分野
  13. 13.知識の創造や人材交流などの国際交流
    • 国家、地域、世界レベルで研究、貿易、投資に関するネットワークの確立
    • 対内直接投資の奨励措置、また海外の高度人材の誘致措置(例:スマートビザ)などにより、国内のイノベーションエコシステムの強化

出所:BCG行動計画からジェトロ作成

成長が期待される医療機器・デジタルヘルス

後段では、BCG経済モデルの中でも、成長が期待され、日系企業の参入事例も見られる、医療機器に注目する。BOIによれば、タイの医療機器市場は2022~2023年の間、年平均6.5%で成長する見込みだ。高齢者医療市場の拡大、医療ツーリズムによる外国人観光客の増加、また多くの民間医療機関の設備増強・拡張から、医療機器の需要増加が期待される。

目指す方向性は、タイが医療機器製造におけるアジアのハブとなり、デジタル医療プラットフォームを構築することだ。BCG政策委員会の下にある「医療機器・デジタルヘルス小委員会」では、そのため、4つの戦略を掲げている。具体的には、戦略1「医療分野における海外依存の低減」、戦略2「デジタル・ヘルスケア・プラットフォーム構築による医療格差の是正」、戦略3「医療機器産業への投資誘致」、そして戦略4「地場の医療機器メーカーの能力向上」だ。各戦略の取り組みは以下のとおりだ。

戦略1では、官民連携で医療機器を開発する。既にレントゲン装置、骨代用材が官民連携で開発され、複数の病院に導入されている。また、地場企業や研究機関が開発した製品は、安全・価格面で認可されれば、「国家イノベーションリスト」に掲載し、タイの公的機関に優先的に調達される。同リストは2015年から運用され、2022年までに314品目の医療機器が掲載された。新型コロナウイルスの抗原検査キット、歯科用CTスキャンなども含まれる。

戦略2でも、多くの医療用デジタルツールが官民連携で既に開発されている。例えば、「支援技術・医療機器研究センター(A-MED)」は2021年、スマートフォン用アプリケーション「A-MED Telehealth」を開発した。同アプリは、隔離中の新型コロナウイルス陽性者が、自身の健康状態を医療機関に報告、また医師によるオンライン診療を受けるために利用されている。

戦略3は、投資の促進だ。主要な取り組みとして、首都バンコクに、国家イノベーション庁(NIA)が開発した「ヨティ医療イノベーション地区(Yothi Medical Innovation District)」が設置されている。企業が同地区内に投資する場合、BOIによる投資優遇措置(法人税免除など)に加え、条件を満たせば、さらに5年間法人税が50%減免される。

そして、戦略4だ。NSTDAによれば、タイの医療機器の輸出額は約1,586億5,300万バーツだが、その9割は消耗品である(2020年)。企業規模で見ても、国内の医療機器メーカーの98.2%は中小企業だ。そして、その多くは消耗品を製造し、製品の付加価値は高くない。消耗品の例としては、医療用ゴム手袋やプラスチックガウンがあるが、その原料となるゴムやプラスチックが、タイで豊富に入手できる。これらが、タイで消耗品生産の多い理由のひとつだ。他方、業界全体の収益の8割は大企業に集中、その多くは外資企業である(2019年)。地場企業の生産能力を強化し、付加価値の高い医療機器や試験薬などの生産増加が望まれる。

日系企業の戦略と、市場の見方

前段までの政策動向を踏まえ、現地の医療機器市場における日系企業の事例、また企業から見た課題や市場性を紹介する。

まず、商務省の登記データを基に、タイの医療機器産業(注1)における企業の投資額(累積)を、国籍別で見る(2023年2月時点)。上位から、タイが1位(86億7,743万バーツ、シェア48.04%)、日本が2位(33億2,946万バーツ、18.43%)、フランスが3位(33億1,820万バーツ、18.37%)と続く。また、同分野の2021年における企業の売上高順で見ると、1位がニプロ(日本)、2位がSBカワスミ(日本)、3位がGEメディカルシステムPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(381KB)(米国)、4位がレキット・ベンキ―ザー(英国)、5位がエメラルド・ノンウーブン・インターナショナル(タイ)と続く。日本資本が1~2位に位置し、日本企業の存在感の高さがうかがえる。

他方、昨今は内視鏡を活用した診断・治療がタイでも注目されている。背景には、タイで消化器系疾病による死者数が中長期的に増加していることがある。世界保健機関(WHO)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます によれば、1999年に消化器系疾病による死者数は8,636人(死因全体の2.38%)だったが、2019年には2万1,239人(4.30%)に拡大。特に、2000年以降、食道ガン、胃ガン、また結腸・直腸ガンによる死者数が増加した(図2参照)。次段では、内視鏡を含め医療機器の販売をタイで行うオリンパスの事例を紹介する。

図2:消化器系ガンの死者数の推移
1999年、消化器系疾病による死者数は8,636人(死因全体の2.38%)だったが、2019年には2万1,239人(4.30%)に拡大。特に、2000年以降、食道ガン、胃ガン、また結腸・直腸ガンによる死者数が増加。

出所:WHOからジェトロ作成

オリンパスは、内科では内視鏡などを、外科では腹腔鏡カメラシステムおよび手術用の器具などを主に扱う。同社によれば、内視鏡では、オリンパスを含めた日本ブランドが世界市場で、またタイでも高い市場シェアを有している。しかし、内視鏡の更なる普及に向けた課題として、タイにおいて、内視鏡を用いた診断・治療にかかる知識・技術を有する医師が不足していることがある。現地の医療業界と連携し、医師への同機器に対する理解促進、普及啓発が必要だ。そのため、同社は2016年、首都バンコクで医療従事者向けの内視鏡の訓練施設「タイ・トレーニング・アンド・エデュケーション・センター(T‐TEC)」を開設(注2)。また、2021年から、最新のAI(人工知能)技術を活用した内視鏡診断の普及・発展に貢献することを目的に、日本の総務省のプロジェクトに参画した。タイの医療業界では、診断目的でのAI活用可能性が注目されており、特に内視鏡を用いた診断への関心は高い。また、外科の腹腔鏡手術器具としては、腹腔鏡カメラシステムならびに超音波メスなどの器具があるが、同分野でも、オリンパスは、カールストルツ(ドイツ)やストライカー(米国)などの欧米ブランドと並び、タイ市場における主要プレーヤーのひとつである。タイには、高度な医療サービスを提供する民間病院が多数存在し、現地の日本人も多く利用している。これらの病院では、手術時の患者への負担を抑えるため、皮膚の切開部分を最小限とする「最小侵襲手術(MIS)」を実施している。先述の腹腔鏡カメラシステムならびに超音波メスなどの器具も、こうしたMISに使用される。こうした治療法の広がりにより、関連医療機器への需要も今後タイにおいて更に高まる可能性がある。

最後に、今後のタイの医療機器市場について、存在感を高めつつある中国製品に言及する。まず、貿易統計(Global Trade Atlas)を用いて、2022年における、タイの医療機器輸入を相手国別に見る(図3参照)。上位から米国(シェア19.75%)、中国(17.60%)、日本(10.55%)の順に多い。特に、過去10年間で、中国からの輸入の割合が2倍以上に拡大している。一方、日本からの輸入の割合は徐々に減少した。また、日本と中国からの医療機器の上位輸入品目では、外科用消耗品、診断用電子機器、カテーテルなどが共通している。これらの製品では、日本が中国企業との間で価格面などでの競争に晒される可能性がある。対策として、医療分野における現地日系企業によれば、現地生産による販売価格の低下、また調達品の選択権限が大きいと思われる、タイ人医師を通じた製品の販売促進が考えられるという。

図3:タイの医療機器輸入相手国の割合(上位国)
上位から米国(シェア19.75%)、中国(17.60%)、日本(10.55%)の順に多い。特に、過去10年間で、中国からの輸入の割合が2倍以上に拡大している。一方、日本からの輸入の割合は24.1%減少(シェア10.55%に)。

注:HSコード9018で抽出。
出所:Global Trade Atlasからジェトロ作成

また、既述のとおり、現在、タイで生産される医療用品は消耗品が多くを占める。しかし、現地医療関係者は、今後市場が成熟するにつれ、タイで生産される医療機器も変化していく可能性があると言う。現在、多く生産されている消耗品(医療用ガーゼなど)から、次のステップとして、医療用メスや針糸に、そして中長期的には、高度な電子医療機器のタイでの生産も考えられるという。しかし、高度な医療機器になるにつれ、現地生産までには、タイの医師会や医療機関と連携した、技術・製品の普及啓発、地場企業への技術指導など、市場形成も含めて複数の段階を経る必要がある。段階によっては、早期の製造・販売を求めるタイの投資優遇制度と条件が合致しない可能性もあり得る。こうした中ではあるが、タイは、高度医療機器関連産業の集積(例:電気・電子)、ASEAN市場への輸出に向けた地理的優位性、また物流インフラの整備などを強みとし、同産業育成を推進すると思われる。


注1:
対象は、歯科を除く医療機器・用品製造業者。商務省の業種分類から、電子医療機器のほか、消耗品などの医療用品も含む。
注2:
同社プレスリリースによる。
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課 課長代理
田口 裕介(たぐち ゆうすけ)
2007年、ジェトロ入構。アジア大洋州課、ジェトロ・バンコク事務所を経て現職。