2022年、サウジアラビアのムハンマド皇太子は積極外交を展開

(サウジアラビア、タイ、英国、トルコ、米国、インドネシア、韓国、フランス、中国)

リヤド発

2022年12月27日

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は2022年、主要国の政府首脳との関係強化を積極的に進める姿勢を示した。

ムハンマド皇太子は2022年1月、外交関係が制限されていたタイのプラユット・チャンオーチャー首相の訪問を受け、国交正常化に合意した。その後、両国で投資フォーラムを複数回開催するなど、関係強化が急速に進んでいる(2022年5月25日記事参照)。

3月には英国のボリス・ジョンソン首相(当時)の訪問を受けた。エネルギー協力に加え、ウクライナ情勢についても議論した(2022年3月22日記事参照)。また、ムハンマド皇太子はロシアのウラジーミル・プーチン大統領と2度の電話会談を実施するなど、ウクライナ問題で積極的に仲介する姿勢を示した(2022年3月7日記事2022年4月18日記事参照)。

トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領とは、4月と6月に2度会談した。2018年10月にトルコでサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギ氏の殺害事件が発覚し、両国関係は冷え込んでいたが、経済分野を中心に協力関係を強化することに合意した(2022年6月24日記事参照)。

7月には米国のジョー・バイデン大統領の訪問を受けた。サルマン・ビン・アブドゥルアジーズ国王とは別に、ムハンマド皇太子も会談を実施(2022年7月19日記事参照)。これまで同皇太子と直接対話する機会を避けてきたバイデン大統領の姿勢の変化が各国メディアで報じられた。

ムハンマド皇太子は11月、エジプトで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27、2022年11月21日記事参照)、インドネシアで開催されたG20首脳会議に相次いで参加し、その後、韓国(2022年11月9日記事参照)、タイを歴訪した。タイではAPEC首脳会議にオブザーバーとして参加したほか、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とも会談した。マクロン大統領とは、7月にフランス訪問時にも会談した。

12月には中国の習近平国家主席の訪問を受けた。習国家主席はサルマン国王との間で包括的戦略パートナーシップ協定に署名した後、ムハンマド皇太子とも個別に面談。合計12件の2国間協定・覚書の締結に立ち会った(2022年12月12日記事参照)。

カショギ氏の事件以降、関与を疑われたムハンマド皇太子は、新型コロナウイルス拡大の影響もあり、国際舞台での露出が減少していた。この1年の積極的な外交について「国際舞台に復帰するタイミングを図っていた皇太子にとって狙いどおりの1年だった」(在サウジアラビアの米国系シンクタンク関係者)など、評価する声が国内には多い。

(秋山士郎)

(サウジアラビア、タイ、英国、トルコ、米国、インドネシア、韓国、フランス、中国)

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