欧州委、再エネ技術などに必要な先端素材の戦略発表、域内エコシステム強化目指す

(EU)

ブリュッセル発

2024年03月01日

欧州委員会は2月27日、先端素材のEU産業界の主導権確保に向けた戦略を示す政策文書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。戦略は、EUの長期的な競争力の強化と、経済安全保障の観点からの域外依存軽減を目的に、EU産業界の欧州グリーン・ディールやデジタル化に必要な先端素材に関連したエコシステムの強化を目指すもの。今回の政策文書はあくまで先端素材に関するEU共通のアプローチ策定に向けた第一歩で、欧州委が今後実施する政策を提示するものの、新たな法案に関する具体的な記述はない。

EU域内で再生可能エネルギー(2024年2月14日記事参照2023年12月15日付地域・分析レポート参照)、エネルギー効率の高い建物(2023年12月15日記事参照)、バッテリー(2023年8月21日記事参照)、半導体(2023年8月2日記事参照)などの生産強化を目指す中、先端素材の需要は今後、大幅な伸びが予想される。一方で、先端素材の域内エコシステムに関しては、加盟国ごとに分断された研究開発の支援枠組みや、米国の半分程度と限定的な民間投資、スタートアップや中小企業などが活用できる試験・実験施設の不足などの課題が指摘されている。

欧州委は、先端素材の研究開発から実用化までの各工程を強化、迅速化する必要があるとして、主に次の政策を実施する予定だ。

  • 加盟国や産業界との協議を進めるべく、「先端素材技術評議会(Technology Council for advanced materials)」を2024年中に設置する。
  • 同技術評議会で研究開発の共通目標と優先事項を2024年末までに策定する。現時点ではエネルギー、モビリティー、建設、電子機器の各分野を想定する。
  • 研究開発用のデジタルインフラの整備を2025年半ばまでに、アクセス改善に向けた域内の試験・実験施設に関する情報集約を2024年中に実施する。
  • EUの研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」で、5億ユーロ規模の支援を2027年までに目指す。ただし、そのうち少なくとも2億5,000万ユーロについては民間投資を想定する。
  • 国家補助規制の特例措置「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」による財政支援を加盟国と検討する。
  • 先端素材の需要喚起に公共調達を活用すべく、支援事業を実施する。
  • 人材確保に向け、「先端素材アカデミー」の設置に向けた入札を2024年中に実施する。

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 f820a100d54e92cb