ドイツの貿易と投資(世界貿易投資動向シリーズ)

要旨・ポイント

  • 2022年の実質GDP成長率は1.9%と前年を下回る。
  • 輸出は乗用車が好調、輸入はエネルギー価格高騰により鉱物性燃料が大幅増。
  • 対内直接投資は前年から大幅に減少、対外直接投資は減速。外国企業によるドイツ企業への投資は事前審査を厳格化。
  • 対日貿易は輸出入いずれも新型コロナ感染拡大前の水準に回復せず。

公開日:2023年11月1日

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マクロ経済 
2022年の実質GDPはプラス成長も、直近の景気は足踏み

2022年のドイツの実質GDP成長率(物価、季節、稼働日調整済み)は1.9%と、前年の3.1%から減速した。ドイツ経済は、ロシアのウクライナ侵攻の影響によるエネルギーや食料価格などの高騰、原材料・部材供給のボトルネック、新型コロナウイルス禍の影響の継続などが響いたが、プラス成長を維持した。そのため2022年のGDPは新型コロナ禍以前の2019年と比較して0.7%増となった。

需要項目別にみると、内需は全体で前年比3.3%増と拡大した。民間最終消費支出は3.9%増となり、前年の1.5%増から大幅に回復し成長をけん引した。家計消費では2022年3月に新型コロナ感染防止対策の行動規制が大幅に緩和されたことを機に、旅行・宿泊への支出が大幅増となったほか、娯楽・文化や衣料品の支出も前年を上回った。政府最終消費支出は、ウクライナ難民支援への支出が増加した一方で、新型コロナ感染防止対策の支出が減少したことから、前年の3.1%増から1.6%増と伸び幅が縮小した。国内総固定資本形成は0.2%増となった。そのうち建設投資は、建築材料と専門人材の不足に加え、建設費の高騰と金利の上昇を受けて契約キャンセルが相次いだため、1.6%減となった。設備投資は4.2%増とプラスを維持するとともに、前年の2.6%増から拡大した。

財貨・サービスの輸出入は、前年の大幅回復から鈍化し、輸出は3.4%増、輸入は6.8%増と、輸入の伸びが輸出を上回ったため外需(純輸出)がGDP成長率を押し下げた。

直近のGDP成長率を四半期別にみると、2023年第1四半期、2022年第4四半期と2期連続でマイナス成長のテクニカルリセッションとなった。このような状況において、2023年の実質GDP成長率の見通しについては見方が分かれている。ドイツ経済・気候保護省は4月、製造業や受注が回復傾向にあることから0.4%との見通しを発表した(注)。一方で、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は6月に0.0%と発表した。ifo経済研究所も同月に、下半期には所得の伸びがインフレ率に追い付き個人消費は回復するが、建設部門の冷え込み、エネルギー集約型製造業の緊迫状況は継続するとして、マイナス0.4%と発表するなど、悲観的な見通しも示されている。なお、2023年第2四半期のGDP成長率は前期比0.0%とマイナス成長から脱し、景気後退局面を回避した。

表1 ドイツの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2021年 2022年 2023年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
実質GDP成長率 3.1 1.9 1.0 △ 0.1 0.4 △ 0.4 △ 0.1 0.0
階層レベル2の項目民間最終消費支出 1.5 3.9 0.6 0.2 0.7 △ 1.0 △ 0.3 0.0
階層レベル2の項目政府最終消費支出 3.1 1.6 1.4 △ 0.1 △ 1.1 △ 0.2 △ 1.9 0.1
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 △ 0.3 0.2 2.2 △ 1.6 1.0 △ 1.3 1.7 0.4
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸出 9.5 3.4 △ 0.1 0.9 1.0 △ 1.1 0.4 △ 1.1
階層レベル2の項目財貨・サービスの輸入 8.8 6.8 0.1 2.4 1.8 △ 1.7 △ 1.5 0.0

〔注〕四半期の伸び率は前期比。物価、季節、稼働日調整済み。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

貿易 
輸出入ともに拡大、輸出は乗用車が堅調

ドイツ連邦統計局によると、2022年の貿易は、輸出が前年比14.3%増の1兆5,768億2,000万ユーロ、輸入は24.1%増の1兆4,942億900万ユーロで、輸出入ともに2年連続で増加した。貿易黒字は826億1,100万ユーロだった。黒字額は前年の1,752億9,600万ユーロから926億8,600万ユーロ減少し、伸び率では52.9%減だった。黒字額は2017年以降、毎年減少している。

輸出を品目別にみると、最大の輸出品目である機械および輸送用機器(構成比44.1%)が前年比11.4%増となり、輸出全体の伸びに最も貢献した。同品目の内訳をみると、乗用車(9.4%)の25.4%増がけん引した道路走行車両(15.2%)の17.4%増と、熱電子管・半導体(1.8%)の36.0%増がけん引した電気機器およびその部分品(8.7%)の13.7%増の伸びが目立った。連邦統計局によると、乗用車のうち内燃機関搭載車の輸出額は14.2%増だったほか、バッテリー式電気自動車(BEV)は92.7%増、プラグインハイブリッド車(PHEV)は9.4%増と、特にBEVの輸出が拡大した。次に輸出額が大きい化学製品(19.1%)も18.0%増となり輸出全体の伸びに貢献し、特に医薬品(7.6%)が18.4%増、有機化学品(2.2%)が24.4%増と拡大した。原料別製品(12.6%)も14.7%増と好調だった。その他、鉱物性燃料、潤滑剤(3.9%)が63.2%増と大幅に増加した。中でも、石油・石油製品(2.1%)が80.0%増と大幅に伸びたが、これは世界的なエネルギー価格の上昇が輸出額を押し上げたためで、輸出量は5.9%増と小幅な増加にとどまった。

輸出を国・地域別にみると、最大の輸出先であるEU(構成比54.6%)は前年比14.6%増となった。EU域内で最大の輸出先であるフランス(7.4%)は12.9%増で、医薬品(2.0%)は24.8%減となったが、主力輸出品目の乗用車(7.2%)が7.3%増、電力(2.0%)が5.0倍、石油製品(1.8%)が2.7倍と伸長した。続くオランダ(7.0%)も乗用車(5.4%)と石油製品(3.0%)が好調で、それぞれ28.9%増、67.5%増となり、全体として9.5%増だった。オーストリア(5.6%)は石油製品(6.3%)の2.3倍と電力(4.4%)の3.1倍がけん引し、22.6%増と伸長した。中・東欧への輸出では、ポーランド(5.7%)が15.2%増、チェコ(3.5%)が15.2%増と、いずれも拡大した。

EU域外では、最大の輸出先である米国(構成比9.9%)は、乗用車(15.3%)の前年比51.1%増、その他医薬品(10.1%)の54.5%増、医薬品(6.2%)の33.1%増などがけん引し、全体で28.1%増となった。中国(6.8%)は、主力輸出品目の乗用車(18.2%)が17.6%増と好調だったが、自動車部品(8.7%)の4.5%減、航空機・関連機器(2.9%)の24.2%減が響き、全体で3.2%増にとどまった。英国(4.7%)は13.5%増となり、EU離脱の移行期間が終了した2021年の3.1%減から回復した。経済制裁の対象となっているロシア(0.9%)は45.2%減となった。最大の輸出品目であるその他医薬品(16.7%)は医薬品価格の上昇により19.4%増となったが、乗用車(3.8%)が69.9%減、自動車部品(1.6%)が83.4%減と大幅に減少したことが響いた。

2023年1~4月の輸出は、前年同期比5.3%増となった。新型コロナ感染対策で2022年5月末まで都市封鎖を完全解除できなかった中国への輸出は、主力の道路走行車両(構成比25.0%)が24.8%減と減少したため、全体で10.6%減となった。

輸入は価格高騰を受け鉱物性燃料、潤滑剤が大幅増

2022年の輸入を品目別にみると、最大の輸入品目である機械および輸送用機器(構成比32.9%)は前年比16.6%増と拡大した。同品目の内訳をみると、その他電気機器(2.5%)が33.8%増、熱電子管・半導体(2.2%)が54.4%増と好調だった結果、電気機器およびその部分品(9.3%)が29.4%増となり、同品目全体の押し上げに貢献した。道路走行車両(8.5%)は、乗用車(4.3%)が13.7%増と前年のマイナスから回復、自動車部品(2.6%)も14.7%増と堅調だったことから、全体で15.0%増となった。次に輸入額が大きい化学製品(15.3%)は、医薬品(5.2%)が13.2%増、有機化学品(4.1%)が87.4%増となり、全体で31.3%増と大幅に伸長した。鉱物性燃料、潤滑剤(12.8%)は82.0%増で、輸入の伸びに最も寄与した。中でも石油・石油製品(6.2%)が70.4%増、天然ガスおよび製造ガス(4.8%)が78.2%増と、いずれも価格高騰の影響を受けた輸入額の大幅伸長が目立った。原料別製品(12.3%)では、非鉄金属(3.4%)が25.7%増となり、同品目の20.2%増の拡大につながった。

輸入を国・地域別にみると、最大の輸入元であるEU(構成比49.2%)は前年比15.3%増、うちユーロ圏(33.8%)は15.2%増だった。ユーロ圏で最大の輸入元であるオランダ(8.0%)は、石油製品(13.5%)の96.7%増などが寄与し、13.6%増となった。ベルギー(4.2%)の19.1%増、オーストリア(3.9%)の21.4%増もユーロ圏からの輸入増に貢献した。また、ポーランド(5.2%)が12.1%増、チェコ(3.9%)が17.9%増となり、非ユーロ圏(15.4%)からの輸入も15.5%増となった。

EU域外では、最大の輸入元の中国(構成比12.8%)が前年比34.3%増となり、2021年の21.8%増から伸び幅が拡大、輸入全体の伸びに最も貢献した。医薬品(0.5%)は64.4%減となったが、有機・無機化合物(8.7%)が17.9倍、その他電気機器(6.5%)が69.3%増、熱電子管・半導体(4.6%)が83.6%増と好調だった。米国(6.2%)は、原油・粗油(9.4%)の2.5倍、乗用車(8.4%)の22.8%増、非電気式の原動機(7.9%)の24.9%増、石炭(2.9%)の3.2倍が寄与し、2021年の6.8%増から27.9%増に伸び幅が拡大した。ロシア(2.4%)は、経済制裁とロシア産エネルギー輸入からの脱却を進めた影響を受け、原油・粗油(33.7%)と石炭(9.4%)は、いずれも輸入量は減少したが、金額ではそれぞれ23.1%増、54.3%増となり、全体で7.0%増となった。一方、石油製品(15.4%)は2.1倍となり、輸入量も増加した。エネルギー輸入先の多様化を図る中、ノルウェー(4.2%)からの輸入は原油・粗油(12.8%)が3.0倍、電力(2.0%)が3.0倍と大幅増となったことから、3.2倍に拡大した。

表2-1 ドイツの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 625,040 696,165 44.1 11.4
階層レベル2の項目道路走行車両 204,054 239,474 15.2 17.4
階層レベル3の項目乗用車 118,207 148,270 9.4 25.4
階層レベル3の項目自動車部品 59,269 61,435 3.9 3.7
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 121,250 137,827 8.7 13.7
階層レベル3の項目電気回路開閉機器 34,605 38,167 2.4 10.3
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 101,717 108,616 6.9 6.8
階層レベル2の項目産業用機械 58,721 64,121 4.1 9.2
階層レベル2の項目原動機 42,612 45,038 2.9 5.7
化学製品 255,244 301,108 19.1 18.0
階層レベル2の項目医薬品 101,153 119,723 7.6 18.4
階層レベル3の項目その他医薬品 54,834 70,945 4.5 29.4
階層レベル3の項目医薬品 46,319 48,778 3.1 5.3
原料別製品 173,266 198,691 12.6 14.7
階層レベル2の項目その他金属製品 44,078 48,135 3.1 9.2
階層レベル2の項目非鉄金属 38,755 44,117 2.8 13.8
雑製品 156,474 168,102 10.7 7.4
階層レベル2の項目計測機器および制御機器 51,073 54,637 3.5 7.0
階層レベル3の項目測定・分析・制御機器 31,310 32,737 2.1 4.6
階層レベル2の項目その他雑製品 46,593 48,085 3.0 3.2
食料品および生きた動物 62,329 73,203 4.6 17.4
鉱物性燃料、潤滑剤 37,963 61,948 3.9 63.2
特殊取扱品 29,507 34,730 2.2 17.7
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 28,019 29,878 1.9 6.6
飲料およびたばこ 8,120 8,839 0.6 8.9
動植物性油脂、脂肪、ろう 3,384 4,157 0.3 22.9
合計(その他含む) 1,379,346 1,576,820 100.0 14.3

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表2-2 ドイツの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
機械および輸送用機器 421,707 491,686 32.9 16.6
階層レベル2の項目電気機器およびその部分品 107,216 138,735 9.3 29.4
階層レベル2の項目道路走行車両 110,702 127,265 8.5 15.0
階層レベル3の項目乗用車 57,064 64,904 4.3 13.7
階層レベル3の項目自動車部品 34,488 39,540 2.6 14.7
階層レベル2の項目一般工業用機械類およびその部分品 50,983 57,258 3.8 12.3
化学製品 173,679 227,972 15.3 31.3
階層レベル2の項目医薬品 68,216 77,249 5.2 13.2
階層レベル3の項目医薬品 39,114 44,507 3.0 13.8
階層レベル2の項目有機化学品 33,009 61,872 4.1 87.4
階層レベル3の項目有機・無機化合物 15,099 38,289 2.6 153.6
鉱物性燃料、潤滑剤 105,320 191,631 12.8 82.0
階層レベル2の項目石油,石油製品 54,782 93,344 6.2 70.4
階層レベル3の項目原油・粗油 34,161 58,327 3.9 70.7
階層レベル2の項目天然ガスおよび製造ガス 40,475 72,122 4.8 78.2
階層レベル3の項目天然ガス 39,068 70,360 4.7 80.1
原料別製品 153,385 184,415 12.3 20.2
階層レベル2の項目非鉄金属 40,738 51,221 3.4 25.7
雑製品 150,458 170,937 11.4 13.6
食料品および生きた動物 70,589 82,328 5.5 16.6
特殊取扱品 65,844 76,439 5.1 16.1
階層レベル2の項目特殊取扱品(種類別に分類されないもの) 52,640 60,596 4.1 15.1
階層レベル3の項目機用品,再輸入品 52,640 60,596 4.1 15.1
非食用原材料(鉱物性燃料除く) 49,431 52,897 3.5 7.0
飲料およびたばこ 9,668 10,166 0.7 5.2
動植物性油脂、脂肪、ろう 3,969 5,737 0.4 44.5
合計(その他含む) 1,204,050 1,494,209 100.0 24.1

〔注〕EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-1 ドイツの主要国・地域別輸出(FOB)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 751,322 861,164 54.6 14.6
階層レベル2の項目ユーロ圏 522,026 601,014 38.1 15.1
階層レベル3の項目フランス 102,741 116,016 7.4 12.9
階層レベル3の項目オランダ 101,050 110,618 7.0 9.5
階層レベル3の項目オーストリア 72,385 88,726 5.6 22.6
階層レベル3の項目イタリア 75,526 87,526 5.6 15.9
階層レベル3の項目ベルギー 51,411 61,796 3.9 20.2
階層レベル3の項目スペイン 43,932 49,025 3.1 11.6
階層レベル2の項目非ユーロ圏 229,296 260,150 16.5 13.5
階層レベル3の項目ポーランド 78,578 90,515 5.7 15.2
階層レベル3の項目チェコ 47,279 54,488 3.5 15.2
階層レベル3の項目ハンガリー 28,999 32,204 2.0 11.1
階層レベル3の項目スウェーデン 26,640 29,160 1.8 9.5
階層レベル3の項目デンマーク 20,921 23,389 1.5 11.8
英国 65,002 73,789 4.7 13.5
アジア大洋州 205,045 222,985 14.1 8.7
階層レベル2の項目ASEAN 25,738 28,131 1.8 9.3
階層レベル3の項目シンガポール 7,226 7,717 0.5 6.8
階層レベル3の項目マレーシア 5,168 6,220 0.4 20.3
階層レベル3の項目タイ 4,924 5,437 0.3 10.4
階層レベル2の項目中国 103,564 106,879 6.8 3.2
階層レベル2の項目韓国 18,733 21,531 1.4 14.9
階層レベル2の項目日本 18,245 20,514 1.3 12.4
階層レベル2の項目インド 12,429 14,879 0.9 19.7
米国 121,980 156,214 9.9 28.1
スイス 60,638 70,632 4.5 16.5
トルコ 21,309 26,983 1.7 26.6
メキシコ 13,190 16,353 1.0 24.0
ロシア 26,632 14,585 0.9 △ 45.2
ブラジル 10,484 12,910 0.8 23.1
合計(その他含む) 1,379,346 1,576,820 100.0 14.3

〔注〕(1)EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告書などに基づく。
(2)アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

表3-2 ドイツの主要国・地域別輸入(CIF)(単位:100万ユーロ、%)
国・地域 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
EU 638,064 735,566 49.2 15.3
階層レベル2の項目ユーロ圏 438,294 504,873 33.8 15.2
階層レベル3の項目オランダ 105,113 119,430 8.0 13.6
階層レベル3の項目イタリア 65,389 72,272 4.8 10.5
階層レベル3の項目フランス 61,921 69,280 4.6 11.9
階層レベル3の項目ベルギー 52,302 62,313 4.2 19.1
階層レベル3の項目オーストリア 47,492 57,640 3.9 21.4
階層レベル3の項目スペイン 34,180 37,412 2.5 9.5
階層レベル3の項目アイルランド 21,173 28,296 1.9 33.6
階層レベル2の項目非ユーロ圏 199,770 230,693 15.4 15.5
階層レベル3の項目ポーランド 69,048 77,384 5.2 12.1
階層レベル3の項目チェコ 49,729 58,632 3.9 17.9
階層レベル3の項目ハンガリー 29,623 33,821 2.3 14.2
階層レベル3の項目スウェーデン 16,852 18,466 1.2 9.6
階層レベル3の項目ルーマニア 14,667 17,493 1.2 19.3
英国 32,245 37,997 2.5 17.8
アジア大洋州 249,919 328,296 22.0 31.4
階層レベル2の項目ASEAN 42,504 57,641 3.9 35.6
階層レベル3の項目ベトナム 10,680 14,694 1.0 37.6
階層レベル3の項目マレーシア 9,956 12,476 0.8 25.3
階層レベル3の項目タイ 6,929 8,635 0.6 24.6
階層レベル2の項目中国 142,964 191,980 12.8 34.3
階層レベル2の項目日本 23,477 25,282 1.7 7.7
階層レベル2の項目台湾 12,202 16,929 1.1 38.7
階層レベル2の項目インド 10,879 15,018 1.0 38.0
米国 72,316 92,478 6.2 27.9
ノルウェー 19,403 62,101 4.2 220.1
スイス 49,247 55,349 3.7 12.4
ロシア 33,116 35,419 2.4 7.0
トルコ 18,566 24,572 1.6 32.4
合計(その他含む) 1,204,050 1,494,209 100.0 24.1

〔注〕(1)EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告書などに基づく。
(2)アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕ドイツ連邦統計局

対内直接投資 
対内直接投資は大幅に減少、事前投資審査は厳格な判断が続く

ドイツ連邦銀行によると、2022年の対内直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は437億2,500万ユーロと2021年の804億8,300万ユーロから大幅に減少した。ドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)によると、2022年に発表された国外からの投資案件数は前年比81件減の1,954件となった。このうち、拡張と移転を含むグリーンフィールド投資案件数は23件減の1,783件と減少したが、投資額は253億ユーロと2021年の70億ユーロを大幅に上回った。国・地域別にみると、米国からの投資が279件と前年に引き続き最多となった。次いで、スイスが208件となった。この他、英国が30件増の170件、トルコが54件増の139件と増加した。一方で、中国が8件減の141件、オランダが26件減の111件と減少した。M&A案件数は58件減の171件となった。

2022年の対内直接投資額を国・地域別にみると、EU域内からの投資が92億1,400万ユーロと前年の438億ユーロから大幅に後退した。このうちユーロ圏からの投資は、前年の473億3,800万ユーロから66億1,100万ユーロへ大きく減少した。2021年にEU域内で最大の投資元であったルクセンブルクは250億2,400億ユーロの引き揚げ超過となった。一方、アイルランドからの投資は135億1,200万ユーロと2.1倍に増加し、フランスは109億4,300万ユーロに拡大した。EU域内の非ユーロ圏は前年の35億3,800万ユーロの引き揚げ超過から26億300万ユーロとプラスに転じた。チェコは16億9,800万ユーロと7.0倍に拡大したが、ポーランドは8,600万ユーロの引き揚げ超過となった。

EU域外からは、米国が175億9,400万ユーロと前年の引き揚げ超過から大きく回復し、国別で最大の投資元となった。中国は36億8,900万ユーロと2.4倍に拡大し、アジア最大の投資元となった。英国は306億3,500万ユーロから36億4,800万ユーロの引き揚げ超過に転じた。

2022年の主な投資案件としては、M&Aでは、計測機器や半導体製造装置など産業機械を手掛ける米国のMKSインスツルメンツが8月にめっき薬品、設備のアトテックを51億ドルで買収した。M&A以外では、3月に米国のBEVメーカーのテスラがBEVとリチウムイオン電池を製造するギガファクトリーを開所、6月には米国の自動車メーカーのフォードが20億ドルを投じて既存工場をEV生産専用に改修した新工場を開所した。2023年は、2月に米国の半導体大手ウルフスピードがドイツの自動車部品大手ZFと共同での半導体ウエハー工場建設計画(投資額30億ユーロ)を発表した。その後、欧州半導体法の成立・施行を視野に入れた半導体産業への公的助成の一層の拡大が後押しし、6月には米国の半導体大手インテルが半導体工場の当初の建設計画の拡大(投資額300億ユーロ)を発表、ドイツ史上最大規模の外国企業による対内直接投資案件となった。グリーン分野とデジタル分野ではドイツ国外企業による大型投資案件も目立っている。

外国資本によるドイツ企業の買収や資本参加は、対外経済法に基づく事前投資審査制度の対象とすることができる。事前審査によりドイツや他のEU加盟国の公の秩序や安全保障への脅威につながる投資案件と判断されれば、ドイツ政府は買収の禁止を含め投資制限を命じることができる。ドイツ経済・気候保護省によれば、事前審査が行われた投資案件は、2020年が160件、2021年には306件に増加し、2022年は306件と前年から横ばいとなった。2022年に事前審査対象となった306件のうち、投資制限を受けたのは7件(2023年1月の発表時点で39件が審査継続中のため暫定値)となっている。投資国元別にみると、米国が110件と3分の1を占めており、英国(チャネル諸島含む)が40件、中国が37件、EUと欧州自由貿易連合(EFTA)が22件、日本が19件と続いた。

表4 ドイツの国・地域別対内・対外直接投資[国際収支ベース、ネット、フロー](単位:100万ユーロ)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資 対外直接投資
2021年 2022年 2021年 2022年
金額 金額 金額 金額
EU 43,800 9,214 106,592 113,064
階層レベル2の項目ユーロ圏 47,338 6,611 58,118 101,872
階層レベル3の項目アイルランド 6,500 13,512 2,326 7,334
階層レベル3の項目フランス 6,215 10,943 7,364 14,944
階層レベル3の項目オランダ 6,903 6,912 13,286 18,851
階層レベル3の項目イタリア 3,589 2,518 2,574 6,244
階層レベル3の項目スペイン △ 2,079 1,969 7,392 13,112
階層レベル3の項目キプロス 201 1,945 134 104
階層レベル3の項目ルクセンブルク 15,031 △ 25,024 14,175 29,601
階層レベル2の項目非ユーロ圏 △ 3,538 2,603 19,343 521
階層レベル3の項目チェコ 244 1,698 2,362 2,641
階層レベル3の項目デンマーク 332 1,539 2,738 2,386
階層レベル3の項目ポーランド 963 △ 86 3,617 6,166
階層レベル3の項目スウェーデン △ 4,428 △ 684 7,482 △ 16,190
スイス 3,923 4,766 16,361 6,290
ノルウェー 1,153 2,553 653 △ 619
トルコ 342 480 1,121 2,242
ロシア △ 380 △ 169 5,552 △ 3,409
英国 30,635 △ 3,648 29,131 10,671
北米 △ 12,398 17,178 16,286 20,282
階層レベル2の項目米国 △ 8,554 17,594 15,458 18,841
アジア大洋州 12,438 7,818 25,780 25,489
階層レベル2の項目中国 1,531 3,689 9,952 11,532
階層レベル2の項目日本 7,374 3,331 1,819 3,102
階層レベル2の項目シンガポール 1,521 1,237 8,512 3,087
階層レベル2の項目オーストラリア 1,468 448 1,655 1,944
中南米 △ 2,232 3,734 4,838 3,363
階層レベル2の項目メキシコ △ 1,046 1,467 1,737 804
階層レベル2の項目バミューダ △ 2,453 1,340 △ 1,516 1,581
中近東 3,726 893 1,262 258
アフリカ 562 813 1,432 1,853
合計(その他含む) 80,483 43,725 180,852 169,006

〔注〕中国に香港は含まない。
〔出所〕ドイツ連邦銀行

表5-1 ドイツの主な対内直接投資案件(2022年~2023年6月)[M&A以外]
業種 企業名 国籍 時期 投資額 概要
半導体 インテル 米国 2023年6月 300億ユーロ 2022年3月、ザクセン・アンハルト州に170億ユーロを投じて半導体工場2棟を建設する計画を発表していたが、2023年6月に投資額を300億ユーロに拡大すると発表。コストの上昇に加え、新工場には当初計画より高度な生産技術を導入するよう変更したため投資額が増えた。ドイツ連邦政府からの補助金も増額された。最初の工場は4~5年以内の稼働を目指す。
エネルギー ラウジッツ・エネルギー(LEAG) チェコ 2022年9月 100億ユーロ超 ブランデンブルク州とザクセン州にまたがるポーランド国境に近い一帯で褐炭採掘場と褐炭火力発電所を運営するLEAGは、ドイツの脱褐炭・石炭政策に基づき褐炭関連事業を廃止し、採掘場跡地(3万3,000ヘクタール)を2030年までにグリーンエネルギーの一大拠点にする計画を発表。太陽光や風力の大規模再エネ発電所や水素製造設備、水素火力発電所などを設置する。投資額100億ユーロ超のうち17億5,000万ユーロは脱褐炭・石炭の公的補償金を充てる。
リチウム
イオン電池
ノースボルト スウェーデン 2023年5月 非公表 2022年3月、シュレスビヒ・ホルシュタイン州ハイデにリチウムイオン電池の大規模生産工場「ギガファクトリー」建設を発表していたが、その後計画の進展はみられなかった。2023年5月、既に決まっていた「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に基づく助成に加え、欧州委員会が2023年3月に採択した「暫定危機・移行枠組み(TCTF)」でも助成する方向で調整することになったと発表。操業開始時期は当初の2025年から今回、2026年に延期された。
IT機器/
ITサービス
アップル 米国 2022年3月 10億ユーロ バイエルン州ミュンヘンの拠点に今後6年間で10億ユーロを追加投資すると発表。2022年秋に10億ユーロを投じて設立された半導体デザインセンターの研究開発施設を拡張する。
製薬 ファイザー 米国 2022年5月 3億ユーロ バーデン・ビュルテンベルク州フライブルク工場に、米製薬大手ブリストル マイヤーズ スクイブとともに増設した新建屋が完成したと発表。最新の製薬機器を使用した製造施設が加わったことで、同工場全体の錠剤生産能力は年間120億錠に向上。150カ国に供給する。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表5-2 ドイツの主な対内直接投資案件(2022年~2023年5月)[M&A]
被買収企業(事業) 買収企業 時期 投資額 概要
業種 企業名 企業名 国籍
空調設備 フィースマン キヤリア・グローバル 米国 2023年4月 120億ユーロ 空調大手のキヤリア・グローバルは、家族経営の中堅企業であるフィースマンの暖房機器事業を買収すると発表。買収により、キヤリアは全世界で急拡大中のヒートポンプとエネルギー転換関連ビジネスでのさらなる成長を狙う。フィースマンはキヤリアの世界的ネットワークを通じて、自社の暖房機器事業のさらなる展開拡大を狙う。
化学 MBCCグループ シーカ スイス 2023年5月 55億
スイス・フラン
土木・建築・工業用化学品のシーカは、建設システムと混和剤システムで事業展開するMBCCグループの買収を完了。買収によりシーカは事業基盤を強化し、建設ライフサイクル全体にわたる製品とサービスの範囲の拡大を狙う。
化学 アトテック MKSインスツルメンツ 米国 2022年8月 51億ドル 計測機器や半導体製造装置など産業機器を手掛けるMKSインスツルメンツは、めっき薬品、設備などのアトテックの買収を完了。アトテックの技術を取り込み、高度エレクトロニクス分野でのリーディングカンパニーを目指す。
ITサービス トランスポレオン トリンブル 米国 2023年4月 18億8,000万ユーロ 測量機器の製造や産業・物流などソリューションを提供するトリンブルは、クラウド型輸送管理ソフトウエアのトランスポレオンの買収を完了。トリンブルはトランスポレオンの事業を自社の物流部門に統合し、同部門の事業を強化する。
医薬品卸売、
サービス
ファーマレックス センコラ(発表時社名:アメリソースバーゲン) 米国 2023年1月 12億8,000万ユーロ 医薬品卸売のセンコラは、ライフサイエンス業界向けの専門サービスを提供するファーマレックスの買収を完了。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対外直接投資 
対外直接投資は減速、ロシアへの投資は引き揚げ超過

ドイツ連邦銀行によると、2022年の対外直接投資額(国際収支ベース、ネット、フロー)は1,690億600万ユーロとなり、前年の1,808億5,200万ユーロから減少した。

国・地域別にみると、最大の投資先であるEU域内への投資は1,130億6,400万ユーロと前年の1,065億9,200万ユーロからは微増だった。うち、ユーロ圏は1,018億7,200万ユーロだった。EU域内最大の投資先はルクセンブルクで、296億100万ユーロと2.1倍に拡大した。

EU域外では、米国が188億4,100万ユーロだった。中国は115億3,200万ユーロと2021年に比べて15.9%拡大した。一方、英国は106億7,100万ユーロと大きく減少した。ロシアは34億900万ユーロの引き揚げ超過となった。

2022年の主な投資案件としては、自動車大手フォルクスワーゲングループ(VWグループ)による大型投資が続いた。VWは3月に30億ユーロを投じて、スペイン東部バレンシアにEV向け車載バッテリーセル工場を建設すると発表した。のちにVW傘下の車載用電池会社のパワーコが新工場の建設と運営を担当することが明らかになった。10月にはVW傘下のソフトウエア開発会社カリアドと自動運転向けの人工知能(AI)チップを研究開発する北京地平線機器人技術研発(Horizon Robotics、地平線機器人)が中国に合弁会社を設立すると発表した。合弁会社設立に関連する総投資額は約24億ユーロを見込む。2023年に入ってからも、3月にVW傘下の米国スカウト・モーターズによるサウスカロライナ州コロンビア近郊での20億ドル規模のEV製造工場建設の発表があった。M&A案件は、特殊化学品のランクセスが2022年7月に、米国香料メーカーのインターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランスの微生物制御事業部門を13億ドルで買収した。

表6-1 ドイツの主な対外直接投資案件(2022年~2023年3月)[M&A以外]
業種 企業名 投資先国 時期 投資額 概要
化学 BASF 中国 2022年9月 100億ユーロ 広東省湛江市に建設中の同社の巨大生産拠点において、エンジニアリングプラスチック・コンパウンドを生産する第1工場が操業を開始したと発表。年間生産能力は6万トンで、中国国内の顧客に供給する。なお同生産拠点は2018年7月に建設計画が発表されたもの。2030年までに最大で100億ユーロを投資する。
自動車 VWグループ(セアト、パワーコ) スペイン 2022年3月 30億ユーロ バレンシア州に電気自動車(EV)用電池工場を建設すると発表。傘下の車載用電池会社のパワーコが新工場の建設と運営を担当する。2023年3月に着工した。2026年に稼働開始予定。2030年までに3,000人以上の雇用創出を見込む。当初の生産能力は年間40ギガワット時(GWh)で、スペイン国内の2工場に供給する。なお、傘下のセアト(スペイン)などとともに、スペインの電動モビリティーエコシステム構築計画「Future:Fast Forward」に、同電池工場の建設を含め総額100億ユーロを投資する。
ソフトウエア VWグループ(カリアド) 中国 2022年10月 24億ユーロ 傘下のソフトウエア開発会社カリアドと自動運転向けの人工知能(AI)チップを研究開発する北京地平線機器人技術研発(Horizon Robotics、地平線機器人)が中国に合弁会社を設立すると発表。カリアドは60%の株式を取得する。合弁会社設立に関連する総投資額は約24億ユーロ。合弁会社は中国市場のニーズに応じて、自動運転に必要な多くの機能を1つの半導体に統合できる技術を開発するほか、VWグループが中国で生産しているEV向けに自動運転ソリューションを提供する。
自動車 BMW ハンガリー 2022年11月 20億ユーロ ハンガリー東部デブレツェンに、EV用高電圧電池の組立工場を建設すると発表(投資額10億ユーロ)。2025年末までに生産開始、500人を雇用予定。2022年6月に定礎式を行い建設工事中の完成車工場(投資額10億ユーロ)の敷地に併設し、2工場合計で1,500人を雇用予定。
自動車 VWグループ(スカウト・モーターズ) 米国 2023年3月 20億ドル サウスカロライナ州コロンビア近郊に過去に生産されていた米国車ブランド「スカウト」をほうふつとさせるデザインの次世代小型トラック(ピックアップトラック)と、スポーツタイプ目的車(SUV)を生産する新工場を建設すると発表。両モデルともEVとする。2023 年半ばに着工し、2026 年末までに生産を開始、4,000人以上を雇用の予定。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

表6-2 ドイツの主な対外直接投資案件(2022年~2023年5月)[M&A]
買収企業 被買収企業(事業) 時期 投資額 概要
企業名 業種 企業名 国籍
ランクセス 素材・化学 インターナショナル・
フレーバー・アンド・
フレグランス
米国 2022年7月 13億ドル 特殊化学品のランクセスは、インターナショナル・フレーバー・アンド・フレグランスのマイクロビアルコントロール(微生物制御)事業部門の買収を完了。買収により、ランクセスは微生物制御製品の世界最大手サプライヤーの1社となったほか、物質保護剤、保存剤、消毒剤の抗菌有効成分や製剤のポートフォリオを大幅に拡充し、世界でのポジショニングの強化を推進する。
メルク ヘルスケア エクセリード 米国 2022年2月 7億8,000万
ドル
医薬・化学品のメルクはバイオ医薬品製造開発受託(CDMO)のエクセリードの買収を完了。エクセリードはmRNA医薬品の鍵となる脂質ナノ粒子(LNP)をベースとした薬物送達技術など高度な注射製剤が専門。買収によりmRNA製造開発受託体制の強化と市場投入までの時間短縮が可能になる。
フレゼニウス カービ ヘルスケア マブサイエンス スペイン 2022年8月 4億9,500万ユーロ 総合医療のフレゼニウス カービはスペインのバイオシミラー(バイオ医薬品の後発薬)のマブサイエンスの株式55%の取得を完了。バイオ医薬品のCDMOへの市場参入を狙う。
シーメンス、VWグループ EV用充電サービス エレクトリファイ・アメリカ 米国 2022年6月 4億5,000万
ドル
シーメンスとVWグループは共同で、EV用公共超高速充電ネットワークを提供するエレクトリファイ・アメリカに出資。北米におけるEV事業、充電・エネルギー事業の拡張を目指す。シーメンスは出資により少数株主となったため、取締役1名を確保。
ワッカーケミー ヘルスケア ADLバイオファーマ スペイン 2023年5月 1億ユーロ 化学品のワッカーケミーは発酵製品のADLバイオファーマの買収を完了。バイオテクノロジー事業の強化を図る。

〔出所〕 各社発表および報道などから作成

対日関係 
対日貿易は輸出入ともに拡大

2022年の対日貿易は、輸出が前年比12.4%増の205億1,400万ユーロ、輸入が7.7%増の252億8,200万ユーロと、輸出入ともに拡大した。ただし、輸出入いずれも新型コロナ感染拡大前の2019年の水準には回復していない。対日貿易赤字は47億6,800万ユーロと前年より4億6,400万ユーロ減少した。日本はドイツにとって輸出では18位、輸入では17位の相手国となっている。

対日輸出を主要品目別にみると、主力の乗用車(構成比17.1%)が前年比4.7%増、その他医薬品(9.3%)が51.1%増、医薬品(7.8%)が20.9%増、銀・白金(2.4%)が45.1%増と好調だったが、航空機・関連機器(2.1%)が34.3%減と落ち込んだ。

対日輸入では、乗用車(構成比7.6%)が前年比19.1%増と前年のマイナスから回復し、熱電子管・半導体(5.8%)が22.1%増、事務用機器(5.5%)が15.7%増、その他の産業用機械(3.6%)が19.2%増、その他の化学工業生産品(3.0%)が30.5%増と多くの品目で伸びたが、有機・無機化合物(2.1%)の39.0%減が響き、全体の伸びが鈍った。

日本からの対独投資は大幅に減少、対日投資は増加

2022年の日本からの直接投資額は、2021年の73億7,400万ユーロから33億3,100万ユーロへ大幅に減少した。2022年の日本企業の主な投資案件としては、ダイキン工業が10月に、欧州のヒートポンプ暖房の需要拡大に対応し、3本の室内機生産ラインを増設すると発表(投資額非公表)した。バーデン・ビュルテンベルク州の工場の生産能力を既存の3倍以上に拡大し、欧州市場の需要に域内生産で対応する。また、ニコンは2023年1月に、高生産性・大型部品向け産業用金属3Dプリンターの開発・製造を行うSLMソリューションズ・グループの買収(投資額6億2,200万ユーロ)を完了した。成長が期待される⾦属3Dプリンターの市場におけるブランドと市場シェアの獲得を目指す。

日本への直接投資額は31億200万ユーロと、前年の18億1,900万ユーロから拡大した。2022年の日本への主な投資案件としては、ロジスティクス大手のDHLサプライチェーンが8月に千葉県八千代市で「DHL八千代ロジスティクスセンター」の起工式(投資額非公表)を行った。市場の需要変化への迅速な対応が求められるコンシューマー・リテール業界に特化した物流サービスを提供する。また、エネルギーハーベスティング(環境発電)無線通信技術による建物・産業機器向けソリューションを提供するエンオーシャンは10月、半導体のルネサス エレクトロニクスのエッジコンピューティングソリューション事業の買収(投資額非公表)を完了した。ルネサスのハードウエアとソフトウエアを取り入れることで、スマートビルディング向けの次世代ソリューションを拡充する。

表7-1 ドイツの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 3,356 3,514 17.1 4.7
その他医薬品 1,257 1,899 9.3 51.1
医薬品 1,330 1,608 7.8 20.9
測定・分析・制御機器 795 862 4.2 8.3
有機・無機化合物 795 758 3.7 △ 4.7
自動車部品 546 497 2.4 △ 9.0
銀・白金 335 486 2.4 45.1
航空機・関連機器 648 426 2.1 △ 34.3
その他の産業用機械 374 420 2.0 12.1
その他の化学工業生産品 278 409 2.0 47.3
熱電子管・半導体 263 409 2.0 55.8
電気回路開閉機器 332 379 1.8 14.1
合計(その他含む) 18,245 20,514 100.0 12.4

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

表7-2 ドイツの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 2021年 2022年
金額 金額 構成比 伸び率
乗用車 1,621 1,929 7.6 19.1
その他電気機器 1,699 1,776 7.0 4.6
測定・分析・制御機器 1,454 1,514 6.0 4.1
熱電子管・半導体 1,201 1,467 5.8 22.1
事務用機器 1,201 1,389 5.5 15.7
その他の産業用機械 772 920 3.6 19.2
玩具・スポーツ用品 867 827 3.3 △ 4.6
その他の化学工業生産品 576 752 3.0 30.5
電気回路開閉機器 686 700 2.8 2.0
空気ポンプ・圧縮機 497 600 2.4 20.7
医療用機器 601 596 2.4 △ 0.8
通信機器 504 540 2.1 7.1
合計(その他含む) 23,477 25,282 100.0 7.7

〔出所〕 ドイツ連邦統計局

(注)本レポートの脱稿後の10月11日、ドイツ経済・気候保護省は経済予測を更新、2023年の実質GDP成長率はマイナス0.4%の見通しと大幅に下方修正した(2023年10月20日付ビジネス短信参照)。

基礎的経済指標

人口
8,436万人 (2022年12月)
面積
35万7,592平方キロメートル(2021年12月)
1人当たりGDP
4万8,636米ドル (2022年)
(△はマイナス値)
項目 単位 2020年 2021年 2022年
実質GDP成長率 (%) △ 4.2 3.1 1.9
消費者物価上昇率 (%) 0.5 3.1 6.9
失業率 (%) 5.9 5.7 5.3
貿易収支 (100万ユーロ) 191,031 194,388 111,887
経常収支 (100万ユーロ) 240,239 278,689 162,033
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 63,969 99,169 98,414
対外債務残高(グロス) (100万ユーロ、期末値) 5,589,936 6,155,575 6,039,199
為替レート ( 1 米ドルにつき、ユーロ、期中平均) 0.8755 0.8455 0.9496

注:
貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所:
人口、面積、実質GDP成長率、消費者物価上昇率:ドイツ連邦統計局
1人当たりGDP:IMF「世界経済見通し(2023年4月)」
失業率:ドイツ連邦雇用庁
貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):ドイツ連邦銀行
外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF