カシフジ、EPA・FTAなど貿易協定利用で競争力を強化(日本)

2021年12月13日

株式会社カシフジ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (本社:京都府京都市)は、コンピューター数値制御(CNC)ホブ盤、CNCホブ刃溝研削盤、歯車面取盤など、歯車加工の工作機械の製造および販売を展開している。国外の顧客に同社の製品を納入するなかで、経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)など貿易協定(以下、FTA)を活用してきた。FTA利用のきっかけやメリットなどについて、カシフジ営業部の肥田倫紀課長に聞いた(2021年11月19日)。


株式会社カシフジ・京都本社(株式会社カシフジ提供)
質問:
貴社の海外展開について教えてください。
答え:
海外への納入はこれまでに、中国、米国、韓国、台湾、インド、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシアなどへの実績がある(株式会社カシフジ ウェブサイト「主要納入先」参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )。海外への納入のうち中国が大半を占めるが、昨期(2020年10月~2021年9月)は中国向けが増加した。中国ではさまざまな分野で自動化が進められており、ロボットなどの自動化関連財の需要が伸びている。ロボットの関節や自動搬送装置(AGV)には歯車が多く使われており、この歯車の歯を加工するのに特化した自社の機械が売れている。
質問:
FTA利用のきっかけは。
答え:
在インドの顧客(日系企業)から、日本・インド包括的経済連携協定を使って日本から輸出してほしいとの要求があったことが、FTAを利用するきっかけとなった。一般社団法人日本工作機械工業会主催のFTA関連講習会、ジェトロ主催のセミナーに参加し、情報を収集した。その後は、日本と納入先所在国との間でFTAが発効していて、かつ、輸出対象製品の関税が撤廃・削減されている場合には、自社から納入先にFTA利用を提案するようになった。
質問:
FTA利用にあたってのメリットは。
答え:
関税撤廃・削減によるメリット。現地で生産している競合メーカーとの価格競争上、FTA適用税率の利用が必要である。使わないと価格面で不利になる。
質問:
ご利用されているFTAと輸出されている商品は。
答え:
これまでに、ホブ盤、ホブ刃溝研削盤、面取盤を米国、インド、インドネシア向けに輸出する際に利用した。対象商品の関税率については、日・インドネシア経済連携では発効とともに即時撤廃、米国では即時半減、インドは輸入関税率が段階的に下がり、今年から撤廃された。

輸出しているKE251型CNCホブ盤
(株式会社カシフジ提供)

輸出しているKG253型CNCホブ刃溝研削盤
(株式会社カシフジ提供)

ホブ切り加工の様子(株式会社カシフジ提供)
質問:
どの様な体制で実務にあたっているか教えてください。
答え:
原産性の確認に必要な資料を収集し、作成しているのは2人。いずれも専任ではなく、空き時間を見つけて作業をしている。不在時にも対応できるよう、また後継者の育成という観点から、もう1人はFTA人材が欲しい。ただし、手続き面でのトラブルは今のところない。
質問:
原産地証明書発給にあたりご苦労された点は。
答え:
原産性の判定基準が利用している協定によって異なっている。付加価値変更基準の場合、書類準備や計算が大変で書類作成に手間がかかる。HSコード上4桁での関税分類変更基準と同等な原産品の判定基準であると、業務簡素化になる。しかし、付加価値変更基準の場合でも原産地証明書作成のためのコスト(1時間当たり工賃に係数を乗じた額)と取引による利益を勘案してもメリットの方が大きく、FTAを利用している。
質問:
地域的な包括的経済連携(RCEP)協定についてはいかがでしょうか。
答え:
RCEP協定については社内勉強会を開催予定(後日、11月22日に実施)。他方で、中国向け、韓国向け輸出でのRCEP協定活用を検討したが、いずれも主要製品は関税削減の対象外であるようだ。自社の中国向け輸出比率が高いだけに、残念に感じている。今後の政府間交渉で関税削減の対象になることに期待したい。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部国際経済課 課長代理
朝倉 啓介(あさくら けいすけ)
2005年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課(2005~2009年)、国際経済研究課(2009 ~2010年)、公益社団法人日本経済研究センター出向(2010~2011年)、ジェトロ農林水産・食品調査課(2011~2013年)、ジェトロ・ムンバイ事務所(2013~2018年)を経て海外調査部国際経済課勤務。

特集:EPAを強みに海外展開に挑む―日本企業の活用事例から

今後記事を追加していきます。