積極的なFTA利用で輸出を増やす中野BC(メキシコ、日本)

2022年4月7日

中野BC株式会社(本社:和歌山県、中野BC)は、和歌山産の南高梅を使用した梅酒、梅酒に果実などを加えたカクテル梅酒、日本酒、ジン、焼酎、みりんなどさまざまな酒類の製造販売を行っている。近年は、南高梅を使用した加工製品の開発や製造にも取り組み、機能性表示食品の開発、製造、販売にも注力する。南高梅は、大粒で皮が薄く、果肉が厚く柔らかいのが特徴。最高品種の梅とも称される(注1)。2020年には、「和歌山梅酒」が酒類の地理的表示(GI)の指定を受けた(注2)。世界25カ国に自社の梅酒などを輸出する中野BCは、積極的に経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)など貿易協定(以下、FTA)を活用している。代表取締役社長の中野幸治氏、海外営業部の吉田朋広氏に聞いた(取材日:2022年3月3日)。


酒類集合写真(中野BC提供)
質問:
貴社の事業内容、海外ビジネスは。
答え:
弊社は醤油(しょうゆ)製造からスタートし、現在は、和歌山県産の梅を世界に広げることを目指し、自社で和歌山産南高梅を使用した梅酒、梅酒カクテル、日本酒、ジン、焼酎、ウイスキーなどを製造販売している。海外ビジネスについて、主な輸出製品は梅酒、日本酒、ジンで、その中でも梅酒の輸出が7割ほどと最も多い。輸出先は世界25カ国にまたがり、その中で香港、中国向け輸出が最も多い。世界では柚子(ユズ)が人気だが、梅は柚子に匹敵するほど香りが高く、加えて機能性の高い食材。和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本食人気が高まったことに伴い、自社の海外ビジネスも増えていったように思う。今後は、人口規模の大きな国、1人当たりGDPの高い国への輸出拡大に関心がある。

会社全体写真(中野BC提供)
質問:
FTAの利用状況、利用のきっかけは。
答え:
タイ、ベトナム、EU、メキシコなど向け輸出にFTAを利用している。メキシコ向けには、2019年からFTAを利用。商工会議所に原産地証明書を発行してもらっている。メキシコ向けも含め、諸外国向け輸出でのFTA利用のきっかけは、現地の輸入者などから依頼を受けたこと。はじめは、何をしたらよいのか、何を調べたらよいか、何から始めたらよいか分からず手探りの状態だった。商工会議所や経済産業省のウェブサイトを見ながら確認し、質問や相談をしながら知識や経験を蓄積していった。FTAに関する情報収集については、関連するホームページを閲覧したり、ジェトロ和歌山事務所にも相談したりしている(注3)。
質問:
FTAのメリット、期待や課題は。
答え:
大きなメリットの1つは関税削減。FTA利用に伴い輸出も増えていった。そのほかのメリットとして、FTAを利用する場合は輸入者側で必要となる書類が明確なため、輸入者から求められる通関書類が予見でき、その意味でわれわれの作業も効率化、簡素化されているように感じる。原産地証明書は、(利用するFTAにより)商工会議所に発行を依頼している。課題について、初めてFTA利用に取り組んだ際、ウェブサイトで情報収集はできるものの、どのような手順で取り組むかなど分からないことが多かった。原産性の判断もしかり。そのため、一つ一つ手順を教えてもらえるような支援があるとよいと感じる。
質問:
貴社におけるFTA利用の体制は?
答え:
FTA利用を開始するにあたっては、最初は一人で情報収集を始めた。現在は複数名の担当者がいる。

注1:
出所、和歌山県庁作成「わかやまの南高梅PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(4.05MB)」。
注2:
GIとは、特定の産地と製品の品質や製法の特性が結びついた農林水産物・食品、酒類などの名称を、知的財産権として保護する制度。和歌山県内では初めてのGI表示の指定、リキュールでは全国初の指定となった。GI和歌山梅酒管理委員会ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。
注3:
ジェトロでは、EPA/FTAに関するさまざまな情報発信を行っている。詳細はジェトロウェブサイト参照。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部米州課 課長代理(中南米)
辻本 希世(つじもと きよ)
2006年、ジェトロ入構。ジェトロ北九州、ジェトロ・サンパウロ事務所などを経て、2019年7月から現職。

特集:EPAを強みに海外展開に挑む―日本企業の活用事例から

今後記事を追加していきます。