2024年米国大統領選挙、トランプ氏優位でも同氏は民主主義への脅威と指摘

2023年12月6日

米国では2024年11月、大統領選挙が予定される。

共和党からは、ドナルド・トランプ前大統領が、予備選の世論調査で首位を維持し続けている。何度も起訴されたにもかかわらず、その勢いは止まっていない。また、2023年10~11月に実施された激戦州での各種世論調査でも、2024年大統領選挙でのトランプ氏優位が示された。11月には、英国の調査会社が「トランプ氏がジョー・バイデン大統領の選挙人獲得数を上回って勝利する」という予想を発表している(2023年11月15日付ビジネス短信参照)。民主党にとって、危惧すべき状況と言える。

一方で、各種メディアなどから、トランプ氏が大統領になることで米国の民主主義が損なわれると指摘する声も挙がる。

激戦州でトランプ氏支持がバイデン氏を上回る

10~11月に激戦州で実施された2024年大統領選挙を想定した世論調査では、おおむねトランプ氏がバイデン氏を上回った。

  • 「ニューヨーク・タイムズ」紙とシエナ大学が実施した調査(注1)
    「もし今日、2024年大統領選挙が行われたら、誰に投票するか」などについて聞いた。実施した6州(ネバダ、ジョージア、アリゾナ、ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン)のうち、ウィスコンシン州を除く5州で、トランプ氏支持がバイデン氏を上回った(2023年11月7日付ビジネス短信参照)。
  • ブルームバーグと調査会社モーニング・コンサルトの調査(注2)
    前述6州にノースカロライナ州を加えた7州で実施。総合的な結果として、トランプ氏(41%)がバイデン氏(35%)を6ポイント上回った。
  • NBCニュースの調査(注3)
    全米を対象に実施。トランプ氏支持が46%、バイデン氏44%だった。
    7月の調査時は、バイデン氏(49%)がトランプ氏(45%)を4ポイントリードしていた。それが、9月の調査時点で互角(両氏ともに46%)。11月に、初めてトランプ氏が上回ったことになる。
    もっとも、「バイデン氏、トランプ氏のいずれにも投票したくない」回答が、7月調査時の6%から11月は10%に増加した。有権者にとって、選択すること自体が難しくなってきた実情も示された。
    なお、「経済」に関してバイデン大統領の対応を「支持する」割合は、9月調査時の37%から11月に38%と微増した。その一方で「外交」は、41%から33%へと急低下した。

ヒスパニック、黒人のバイデン氏支持率低下

政治専門サイト「リアルクリアポリティクス」でバイデン大統領支持率の平均値をみると、10月22日の41.6%を境に低迷が続いている。直近では、12月5日に40.1%だった。2020年大統領選挙で民主党の票を支えたのは、ヒスパニックと黒人だった。そのバイデン氏支持が低下していることが影響したとみられる。

このことは、エマーソン大学の世論調査で、2022年(9月)と2023年(11月)を比較した結果(注4)から読み取れる。この調査には、「もし今日、2024年大統領選挙が実施されたら、トランプ氏、バイデン氏のどちらに投票するか」という設問がある。対象者全体では、バイデン氏への支持が45.3%から42.9%に低下した。これをヒスパニックに限ると、57.7%から45.3%へと、下落がとりわけ顕著だ。また黒人も、68.4%から64.9%に低下した。

「トランプ氏は民主主義への脅威」

こうした中、2024年にトランプ氏が勝利すると民主主義に対する脅威となるという見方が、各種メディアで強まっている。

  • 政治専門紙「ポリティコ」(電子版8月10日付)
    トランプ氏は、(国家ではなく)自分自身の栄光や利益に焦点を当てている。米国民は、トランプ氏が紡ぎだす分断と憎しみの網に陥ることなく、公正かつ永続する平和の実現を目指すべきだ。
  • 英国紙「ガーディアン」(電子版11月9日付)
    米国のメディア報道に問題がある。メディアはバイデン政権の功績や、トランプ氏が当選した場合に米国が権威主義政権の方向に進む危険性などを、国民にしっかり伝えていくべき。
  • 経済誌「エコノミスト」(電子版11月16日付)
    トランプ氏が大統領になることで、影響を受けるのは米国内だけでない。ウクライナやイスラエル問題などの海外への影響も大きく、気候変動への取り組みも妨げられる。

議会でも、ジョー・マンチン連邦上院議員(ウェストバージニア州、民主党)やリズ・チェイニー前連邦下院議員(ウィスコンシン州、共和党)が声を上げた。やはり、「トランプ氏が米国の民主主義への脅威になる」旨が表明されたと報じられている(AP通信電子版11月16日付、「ガーディアン」電子版10月23日付)。チェイニー氏は「党派意識を脇に置いて、憲法を信じる人々が団結する必要がある。トランプ氏が2度と大統領執務室に近づかないように」とも述べた。

またバイデン陣営は、トランプ氏が演説の中で、政敵を害虫(vermin)と形容したことを指摘。「過去の独裁者も同じ言葉を使用した」として、警鐘を鳴らした(ロイター電子版11月14日付)。

人工妊娠中絶が争点化すると、民主党に追い風

実のところ民主党には、追い風要因もある。

11月に実施されたケンタッキー州知事選では、民主党(現職)のアンディ・ベシア氏が当選。同じく11月のバージニア州議会選挙でも、上下両院で民主党が過半数を獲得した(2023年11月9日付ビジネス短信参照)。このいずれでも、人工妊娠中絶の権利保護を支持する党の姿勢が有利に働いたと言われる。オハイオ州で11月に実施された住民投票でも、人工妊娠中絶の権利を保障する州憲法修正案が賛成過半数(56.6%)で可決されるのが確実になった(2023年11月14日付ビジネス短信参照)。

人工妊娠中絶が争点になることで、2024年の大統領選挙の風向きが変わる可能性もある。

両党でくすぶる高齢問題

バイデン氏は、11月をもって81歳になった。その年齢には、懸念が示されることが多い。

もっとも、トランプ氏も77歳と高齢だ。仮にトランプ氏が2024年大統領選挙に当選したとすると、2025年の大統領就任式時点(78歳7カ月)で、バイデン氏が2021年に就任した際の年齢(78歳2カ月)を上回ることになる。

そうしたことから、両氏とも再選の可能性が低いとみる向きもある。

それを裏付けるのが、ハーバード大学アメリカ政治研究センターとハリス・インサイト・アンド・アナリティクスの世論調査だ。この調査では、バイデン氏の立候補を望まない割合が59%に上った。また、トランプ氏は50%だ(注5)。キニピアク大学の世論調査(注6)でも、「現在の候補者以外の人物が立候補することを望む」との回答が52%だった。特に無党派層(72%)、民主党支持者(58%)で高かった。またNBCニュースの調査(注3)でも、両候補以外に期待する回答の増加が確認できる(既に言及した通り。ただし、その構成比はそれほど高くない)。両党とも、別候補が立てられる可能性が残っているわけだ。

政治団体「繁栄のための米国人(AFP)アクション」が11月、共和党のニッキー・ヘイリー候補への支持を表明し(2023年11月30日付ビジネス短信記事参照)、トランプ氏への脅威となる可能性もある。

大統領選挙まで1年足らず、なおも混迷が続く。


注1:
実施時期は2023年10月22日~11月2日。6州の登録有権者3,662人が対象。
注2:
実施時期は2023年10月30日~11月7日。7州(アリゾナ、ジョージア、ミシガン、ネバダ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ノースカロライナ)の登録有権者4,922人が対象。
注3:
実施時期は2023年11月10~14日。全米の登録有権者1,000人が対象。調査結果は、11月19日に発表された。
注4:
実施時期は2022年9月20~21日、2023年11月17~20日。全米の登録有権者が対象。それぞれ、1,368人、1475人。
注5:
実施時期は2023年11月15~16日。全米の登録有権者2,851人が対象。
注6:
実施時期は2023年11月9~13日。全米の登録有権者1,574人が対象。
執筆者紹介
ジェトロ調査部米州課
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。