特集:2021年中南米の貿易動向2021年の貿易は輸出入とも新型コロナ禍前の水準を上回る(コロンビア)
新大統領のFTA政策に関心高まる

2022年9月14日

2021年のコロンビアの貿易は輸出が前年比32.7%増、輸入は40.5%増といずれも新型コロナ禍前の水準を上回った。本稿ではまず、2021年のコロンビアのGDP経済統計を振り返り、2021年の経済情勢を概観しながら、貿易統計を分析していく。

2021年は統計史上最高の成長率

2021年の実質GDP成長率は10.7%と、史上最高の伸びを記録した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年は年間の成長率がマイナス7.0%と統計史上最大の落ち込みを記録したが、2021年第1四半期は経済活動再開にともない前年同期比0.9%と上向き、新型コロナウイルス感染の第3波が落ち着き、ワクチン接種が進んできた第2四半期以降は2桁成長になった。

GDP成長率を産業別にみると、全部門でプラス成長となり、特に商業(20.9%)、製造業(16.4%)、芸術・エンターテインメント(33.1%)が成長を牽引した。商業では、宿泊・外食が57.3%と大幅に伸び、運輸・保管も17.4%と好調だった。製造業では、石油精製製品(15.6%)や繊維製品(40.6%)が成長に寄与した。

需要項目別では、7割を占める民間最終消費支出が14.8%、うち5割以上を占めるサービスも16.7%と2桁成長を記録した。支出目的別では、被服・履物およびレストラン・ホテルがそれぞれ49.4%、43.1%と大幅増となったほか、輸送(28.2%)、娯楽・文化(25.3%)も大きく伸びた。

国際収支ベースの財貨・サービスの輸出については14.2%増、輸入も27.5%増を記録した。以下ではその貿易について、詳細を見ていく。

輸出入ともコロナ禍前の水準を上回る

コロンビアの2021年の貿易(通関ベース)は、輸出が前年比32.7%増の412億2,400万ドル、輸入は40.5%増の611億100万ドルだった。貿易収支は198億7,700万ドルの赤字で、前年から74億4,400万ドル拡大した。貿易額を2019年と比較すると、輸出が4.4%増、輸入が15.9%増と、いずれも新型コロナ禍以前の水準を上回った(表1、3参照)。

貿易統計を国別にみると、引き続き米国が最大の輸出相手国であるものの、中国が米国を抜き最大の輸入相手国となった。2022年8月に就任した左派のグスタボ・ペトロ新大統領のFTA(自由貿易協定)政策に注目が集まる。

国際価格の高騰が石油やコーヒー輸出額増加に寄与

輸出の55%を占める伝統産品は226億2,095万ドルで、前年比43.1%増加した。伝統産品を品目別にみると(表1参照)、石油・同派生品が輸出量は13.0%減少したものの、エネルギー価格高騰により輸出額は52.8%増、石炭も輸出量は16.2%減だが、金額は35.7%増だった。コーヒーも輸出量は1.2%減だったが、輸出額は26.4%増となった。コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)によると、コロンビア産コーヒー豆の国際取引価格は2021年平均で1ポンド当たり約2ドルと、前年比30.0%上昇した。

表1:コロンビアの主要品目別輸出(通関ベース)
輸出(FOB)(単位:100万ドル、%)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産・食品・飲料 7,873 9,440 22.9 19.9
階層レベル2の項目コーヒー、茶、カカオ、香辛料 2,927 3,634 8.8 24.2
階層レベル2の項目肉類・野菜類の未加工品 1,503 1,844 4.5 22.7
階層レベル2の項目豆類・果実 1,405 1,552 3.8 10.5
鉱物性燃料・非鉄金属など 13,310 19,686 47.8 47.9
階層レベル2の項目石油・同派生品 8,728 13,336 32.4 52.8
階層レベル2の項目石炭・コークスなど 4,166 5,652 13.7 35.7
工業品 6,946 8,939 21.7 28.7
階層レベル2の項目プラスチック原料 846 1,375 3.3 62.6
階層レベル2の項目鉄鋼 518 661 1.6 27.5
階層レベル2の項目エッセンシャルオイル・芳香剤など 592 651 1.6 10.0
階層レベル2の項目電気製品、家電製品 528 651 1.6 23.3
階層レベル2の項目金属製品 410 599 1.5 46.2
階層レベル2の項目化学製品 496 588 1.4 18.4
階層レベル2の項目被服・アクセサリー 349 530 1.3 51.8
その他 2,927 3,159 7.7 7.9
階層レベル2の項目金(マネタリーゴールド除く) 2,911 3,141 7.6 7.9
合計 31,056 41,224 100.0 32.7

注:金額は暫定値。構成比はすべて総額に対する比率。
出所:国家統計庁(DANE)

主要国・地域別の輸出では(表2参照)、最大の仕向け先の米国が109億6,000万ドルで前年比22.8%増だった。次いで、中国(36億1,700万ドル、31.5%増)、パナマ(24億2,600万ドル、69.8%増)、インド(20億8,200万ドル、2.6倍)だった。インド向けは、9割を占める燃料が2.7倍に伸びたほか、真珠・貴石が5.4倍の大幅増となった。また、EU最大の仕向け先オランダは、主要品目の鉱物燃料・同派生品が前年比2倍、3割を占める青果類が25.3%増となり、全体では40.4%増の9億8,100万ドルとなった。

表2:コロンビアの主要国・地域別輸出(通関ベース)
輸出(FOB) (単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
北米 10,497 12,864 31.2 22.5
階層レベル2の項目米国 8,922 10,960 26.6 22.8
階層レベル2の項目メキシコ 1,161 1,203 2.9 3.6
階層レベル2の項目カナダ 415 702 1.7 69.2
ALADI(メキシコを除く) 6,405 9,321 22.6 45.5
階層レベル2の項目アンデス共同体 2,430 2,967 7.2 22.1
階層レベル3の項目ボリビア 103 127 0.3 24.0
階層レベル3の項目エクアドル 1,474 1,758 4.3 19.3
階層レベル3の項目ペルー 854 1,081 2.6 26.6
階層レベル2の項目その他ALADI(メキシコを除く) 3,974 6,355 15.4 59.9
階層レベル3の項目パナマ 1,429 2,426 5.9 69.8
階層レベル3の項目ブラジル 1,274 2,049 5.0 60.8
階層レベル3の項目チリ 774 1,090 2.6 40.8
階層レベル3の項目ベネズエラ 196 331 0.8 69.0
階層レベル3の項目アルゼンチン 211 295 0.7 40.0
階層レベル3の項目キューバ 24 96 0.2 301.3
階層レベル3の項目パラグアイ 28 38 0.1 33.8
階層レベル3の項目ウルグアイ 38 30 0.1 △ 21.8
EU 3,600 4,446 10.8 23.5
階層レベル2の項目オランダ 699 981 2.4 40.4
階層レベル2の項目イタリア 961 877 2.1 △ 8.7
階層レベル2の項目ドイツ 497 723 1.8 45.7
階層レベル2の項目スペイン 499 710 1.7 42.2
階層レベル2の項目ベルギー 423 562 1.4 32.9
階層レベル2の項目その他 521 592 1.4 13.6
アジア 4,557 6,885 16.7 51.1
階層レベル2の項目日本 402 468 1.1 16.3
階層レベル2の項目中国 2,751 3,617 8.8 31.5
階層レベル2の項目インド 795 2,082 5.1 161.8
階層レベル2の項目韓国 572 586 1.4 2.4
合計(その他含む) 31,056 41,224 100.0 32.7

注1:ラテンアメリカ統合連合(ALADI)は、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、キューバ、エクアドル、メキシコ、パナマ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラからなる。アンデス共同体は、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルーからなる。
注2:金額は暫定値。
出所:国家統計庁(DANE)

対中輸入増は録画・映像機器、鉄鋼が影響

2021年の輸入は、前年比40.5%増の611億100万ドルだった。輸入全体の77.1%を占める工業品は40.5%増の470億8,200万ドル、14.7%を占める農林水産物・食品・飲料は29.1%増の90億400万ドルとなった。品目別にみると(表3参照)、首位の自動車が53億8,000万ドルで40.2%増、次いで医薬品が41億1,900万ドルで53.7%増だった。

表3:コロンビアの主要品目別輸入(通関ベース)
輸入(CIF) (単位:100万ドル、%)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
農林水産物・食品・飲料 6,973 9,004 14.7 29.1
階層レベル2の項目穀物・同調整品 2,126 2,756 4.5 29.6
階層レベル2の項目飼料 928 1,248 2.0 34.4
鉱物性燃料・非鉄金属など 2,947 4,931 8.1 67.3
階層レベル2の項目石油・同派生品 2,047 3,703 6.1 80.9
工業品 33,504 47,082 77.1 40.5
階層レベル2の項目自動車 3,837 5,380 8.8 40.2
階層レベル2の項目医薬品 2,679 4,119 6.7 53.7
階層レベル2の項目通信機器・映像再生機 3,244 3,924 6.4 21.0
階層レベル2の項目鉄鋼 1,411 3,086 5.1 118.7
階層レベル2の項目有機化学品 1,921 3,026 5.0 57.5
階層レベル2の項目電気機器・同部品 1,771 2,448 4.0 38.3
階層レベル2の項目一般産業機械・同部品 1,906 2,359 3.9 23.7
階層レベル2の項目プラスチック原料 1,235 2,096 3.4 69.8
階層レベル2の項目織物および繊維製品 1,538 1,869 3.1 21.5
階層レベル2の項目事務機・自動データ処理機 1,371 1,694 2.8 23.6
階層レベル2の項目化学製品 1,220 1,537 2.5 25.9
合計(その他含む) 43,489 61,101 100.0 40.5

注:金額は暫定値。構成比はすべて総額に対する比率。
出所:国家統計庁(DANE)

主要国・地域別の輸入では(表4参照)、中国が前年比42.3%増の147億9,600万ドルで、米国を抜いて最大の輸入相手国となった。録画・映像機器が29.1%増となったほか、鉄鋼が3.2倍に増加した。米国は140億7,100万ドルで33.5%増だった。主要品目の燃料、鉱油が59.7%増となり、有機化学製品も 64.4%の大幅増となった。

表4:コロンビアの主要国・地域別輸入(通関ベース)
輸入(CIF) (単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域名 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
北米 14,217 18,848 30.8 32.6
階層レベル2の項目米国 10,540 14,071 23.0 33.5
階層レベル2の項目メキシコ 2,926 3,800 6.2 29.9
階層レベル2の項目カナダ 751 977 1.6 30.0
ALADI(メキシコを除く) 5,708 7,982 13.1 39.9
階層レベル2の項目アンデス共同体 1,798 2,210 3.6 22.9
階層レベル3の項目ペルー 681 856 1.4 25.7
階層レベル3の項目エクアドル 790 830 1.4 5.1
階層レベル3の項目ボリビア 327 524 0.9 60.2
階層レベル2の項目その他ALADI(メキシコを除く) 3,910 5,772 9.4 47.6
階層レベル3の項目ブラジル 2,435 3,502 5.7 43.8
階層レベル3の項目アルゼンチン 724 1,300 2.1 79.5
階層レベル3の項目チリ 604 752 1.2 24.4
階層レベル3の項目ウルグアイ 66 87 0.1 33.0
階層レベル3の項目ベネズエラ 28 69 0.1 151.8
階層レベル3の項目パナマ 23 41 0.1 78.9
階層レベル3の項目パラグアイ 26 17 0.0 △ 36.7
階層レベル3の項目キューバ 3 4 0.0 12.1
EU 5,817 8,236 13.5 41.6
階層レベル2の項目ドイツ 1,644 2,065 3.4 25.6
階層レベル2の項目フランス 958 1,474 2.4 53.9
階層レベル2の項目スペイン 798 1,289 2.1 61.6
階層レベル2の項目イタリア 679 899 1.5 32.3
階層レベル2の項目オランダ 251 489 0.8 94.7
階層レベル2の項目その他 1,487 2,020 3.3 35.9
アジア 13,241 18,932 31.0 43.0
階層レベル2の項目日本 879 1,269 2.1 44.3
階層レベル2の項目中国 10,399 14,796 24.2 42.3
階層レベル2の項目インド 937 1,378 2.3 47.1
階層レベル2の項目韓国 676 969 1.6 43.2
合計(その他含む) 43,489 61,101 100.0 40.5

注1:ラテンアメリカ統合連合(ALADI)は、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、キューバ、エクアドル、メキシコ、パナマ、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ、ベネズエラからなる。アンデス共同体は、ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルーからなる。
注2:金額は暫定値。
出所:国家統計庁(DANE)

対日輸出は鉱物性燃料が大幅増加

2021年の対日輸出は前年比16.3%増の4億6,783万ドル、対日輸入は44.3%増の12億6,894万ドルで、貿易収支は8億111万ドルの赤字となった。増加額は輸入が輸出を上回り、赤字額は前年から3億2,439万ドル拡大した(表5、6参照)。

対日輸出を主要品目別にみると(表5参照)、構成比で46.2%と最大のコーヒー、紅茶、スパイスが2億1,631万ドルで、前年比7.5%増となった。次いで、21.2%を占める鉱物性燃料は9,914万ドルで31.4%増、1割強を占める花卉(かき)は5,231万ドルで6.7%増加した。

表5:コロンビアの対日主要品目別輸出(通関ベース)
輸出(FOB) (単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
コーヒー、紅茶、スパイス 201,283 216,312 46.2 7.5
鉱物性燃料 75,419 99,138 21.2 31.4
植物 52,006 54,105 11.6 4.0
階層レベル2の項目花卉 49,018 52,310 11.2 6.7
階層レベル2の項目食用フルーツ 2,824 1,722 0.4 △ 39.0
食品、飲料、たばこ 24,005 34,126 7.3 42.2
鋳鉄、鉄鋼 23,099 25,774 5.5 11.6
化学品 14,157 11,840 2.5 △ 16.4
金属および同製品 5,886 11,217 2.4 90.6
真珠、貴石 2,093 6,966 1.5 232.8
動物および同製品 1,709 2,073 0.4 21.3
階層レベル2の項目魚など 1,595 1,940 0.4 21.6
菓子 1,119 860 0.2 △ 23.2
合計(その他含む) 402,401 467,829 100.0 16.3

出所:国家統計庁(DANE)

対日輸入を主要品目別にみると(表6参照)、工業製品が大半を占める。構成比の高い順に、鋳鉄、鉄鋼が前年比約2倍の3億8,844万ドル、自動車製品、部品が56.0%増の3億8,515万ドル、ボイラー、機械および部品が25.7%増の2億4,092万ドルと、上位3品目で全体の80%を占める。

表6:コロンビアの対日主要品目別輸入(通関ベース)
輸入(CIF) (単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2020年 2021年
金額 金額 構成比 伸び率
自動車製品、部品 246,854 385,149 30.4 56.0
鋳鉄、鉄鋼 197,450 388,436 30.6 96.7
ボイラー、機械および部品 191,622 240,923 19.0 25.7
光学機器および映像記録機器 51,584 53,547 4.2 3.8
ゴムおよび同製品 50,298 31,426 2.5 △ 37.5
鋳鉄製品、鉄鋼製品 8,584 11,567 0.9 34.8
合計(その他含む) 879,124 1,268,938 100.0 44.3

出所:国家統計庁(DANE)

日本とのEPA(経済連携協定)交渉については、18分野のうち既に16分野で合意に至ったが、マーケットアクセスと原産地規則で意見の隔たりがあり、 2015年9月の第13回会合以後、交渉会合は開催されていない。 2022年8月に大統領に就任した左派のペトロ氏は、選挙戦時には貿易協定の見直しを公約に掲げていたことから、EPA交渉再開に対する今後のスタンスは不透明だ。一方で、両国経済界からは早期締結を望む声が上がっている。

執筆者紹介
ジェトロ・ボゴタ事務所
茗荷谷 奏(みょうがだに かな)
2016年、ジェトロ入構。ジェトロ・ボゴタ事務所で管理・渉外・調査を担当。