ジェトロ対日投資報告2023
第3章 最近の政府施策
第1節 経済財政運営と改革の基本方針2023

ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルス感染症、気候変動問題など、日本を取り巻く国際環境に構造変化が生じているとともに、国内では輸入資源価格の高騰、少子高齢化・人口減少、潜在成長率の停滞、災害の頻発化・激甚化など、内外の難局が同時かつ複合的に押し寄せている。

こうした中、この難局を乗り越えると同時に、社会課題の解決に向けた取組み自体を成長のエンジンとしていくことが必要とされており、30年ぶりとなる高い水準の賃上げや企業部門における高い投資意欲など、足元での前向きな動きをさらに力強く拡大すべく、「新しい資本主義」の実現に向けた取組みを加速させ、新時代にふさわしい経済社会の創造を目指す。このような背景をもとに、「経済財政運営と改革の基本方針2023」が2023年6月16日に閣議決定された。

「経済財政運営と改革の基本方針2023」では、政府の経済財政運営と改革の基本方針を明確に示している。特に、「新しい資本主義」の実現への加速の観点では、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」という「三位一体の労働市場改革」を行い、「人への投資」の強化、分厚い中間層を形成するとしているほか、少子化対策・こども政策の抜本強化、包摂社会の実現などに言及している。

特に、「投資の拡大と経済社会改革の実行」の施策として、以下のような取り組みが挙げられている。

図表3-1 「投資の拡大と経済社会改革の実行」における取組み
No. 概要 主な計画
1 官民連携による国内投資拡大とサプライチェーンの強靱化
  • 予算・税制、規制・制度改⾰を総動員して⺠間設備投資115兆円を早期実現し、地域に質の⾼い雇⽤を創出する
  • 次世代半導体を含めグローバルサプライチェーンの中核となることを⽬指し、投資拡⼤等を図る
2 グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)等の加速
  • 徹底した省エネの推進、原子力の活用、水素・アンモニアのサプライチェーンの早期構築、10年間で150兆円の官⺠GX投資の実現、「GX経済移⾏債」を活⽤した先⾏投資、「成⻑志向型カーボンプライシング構想」の速やかな実現・実⾏など
3 スタートアップの推進と新たな産業構造への転換
  • 「スタートアップ育成5か年計画」
  • 上記に基づく「グローバル・スタートアップ・キャンパス」
  • 資金供給の強化と出口戦略の多様化の推進
4 官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進
  • AI、量子技術、健康・医療、フュージョンエネルギー、バイオものづくり分野の官民連携による科学技術投資を抜本拡充
  • 宇宙・海洋分野の取組み強化
5 インバウンド(訪日外国人)戦略の展開
  • 日本を舞台とした国際交流の回復
  • 国際頭脳循環の確立
  • 高度人材等の受入れ
  • 資産運用立国・国際金融センターの実現など

2023年版目次

  1. 第1章
  2. 第2章
  3. 第3章

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